日本皮膚科学会雑誌
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ニコチン酸,同メチル,同ブチルの皮膚透過性に関する研究 -とくに諸液状基剤ならびに皮表水浸潰の影響-
松島 伊三雄長村 洋三
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1980 年 90 巻 8 号 p. 687-

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抄録

C14標識,非標識のニコチン酸(NA),同メチル(MN),同ブチル(BN)を諸液状基剤(水,オリーブ油,エタノール,プロピレングリコール)に溶解した溶液をヒト切除皮膚(表皮,真皮,皮下組織を除去した全層皮膚)および生体皮膚表面に滴下し,前者(in vitro試験)における透過量,後者(in vivo 試験)における紅斑発生所要最小有効濃度を測定する方法により下記の成績を得た, 1)全層皮膚の透過量の成績は真皮の透過性にも左右されるため,表皮膜透過量の成績と異なる結果をみた. 2)表皮膜の透過は BN, MN のような脂溶性物質が,真皮の透過はMNのような水・脂溶性物質が優れていた. 3)イヒ学物質の皮膚への移行には,物質と液状基剤の親和性が多分に関係し,親和性が著しく大であると移行量が小となる傾向が認められた. 4) in vivo 試験でも 3)と同様の成績を得た. 5)皮表を予め水で浸漬した場合,オリーブ油基剤の MN および BN の表皮膜透過量,NA の表皮膜への移行量増大が認められた.但し水基剤では水浸漬の明かな影響をみなかった. 6)in vivo 試験でも皮表を予め水で浸漬すると,オリーブ油基剤の MN, BN は紅斑発生所要濃度の明かな低下をみた.

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© 1980 日本皮膚科学会
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