抄録
病理組織学的に経汗管性の transepithelial elimination を示しか転移性皮膚癌の1例を報告した.症例58歳,男.18年前十二指腸潰瘍の手術をうけ,その瘢痕部下端,𦜝直上に半年前より腫瘤が出現.精査の結果,上行結腸の高分化腺痛を原発巣とする皮膚転移と判明した.病理組織学的に表皮を貫く腫瘍内物質と腫瘍塊の排出像を認めた.従来, transepithelial elimination としては,経表皮性,経毛嚢性経路が確認されているが,本症例では経汗管性を示唆する所見が認められた.生検時に認められたこれらの所見は,切除後3ヵ月にて再発した同部の腫瘤をはじめ,末期の皮膚転移巣には検索した範聞では認められなかったので, transepithelial elimination には生体側のなんらかの要因が関与するものと思われた.