日本皮膚科学会雑誌
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91 巻, 1 号
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  • 岡 恵子, 宮崎 和広, 高屋 通子, 川原 穣, 佐藤 和人
    1981 年 91 巻 1 号 p. 1-
    発行日: 1981年
    公開日: 2014/08/21
    ジャーナル 認証あり
    病理組織学的に経汗管性の transepithelial elimination を示しか転移性皮膚癌の1例を報告した.症例58歳,男.18年前十二指腸潰瘍の手術をうけ,その瘢痕部下端,𦜝直上に半年前より腫瘤が出現.精査の結果,上行結腸の高分化腺痛を原発巣とする皮膚転移と判明した.病理組織学的に表皮を貫く腫瘍内物質と腫瘍塊の排出像を認めた.従来, transepithelial elimination としては,経表皮性,経毛嚢性経路が確認されているが,本症例では経汗管性を示唆する所見が認められた.生検時に認められたこれらの所見は,切除後3ヵ月にて再発した同部の腫瘤をはじめ,末期の皮膚転移巣には検索した範聞では認められなかったので, transepithelial elimination には生体側のなんらかの要因が関与するものと思われた.
  • 落合 豊子, 鈴木 啓之
    1981 年 91 巻 1 号 p. 7-
    発行日: 1981年
    公開日: 2014/08/21
    ジャーナル 認証あり
    胎生20日のSDラット指腹皮膚を用い,メルケル紅胞を電顕的ならびに形態計測的に観察し,更に幼若期ラットのメルケル細胞と比較検討を加えた.胎生20日ですでにメルケル細胞は表皮基底層あるいはその直士.層に存在することが認められた.それらの細胞は明るい細胞質と切れこみの多い核を持ち,周囲のケラチノサイトとはデスモゾームにより接着する.細胞質には繊毛,中等度に発達したゴルジ装昿細線維を認め,直径1,070±360Åのメルケル細胞顆粒が少数孤立性に散在する.しかしながら観察し得た15個のメルケル細胞のうち軸索の付着したメルケル細胞は認められなかった.胎生20日のメルケル細胞を生後2日(交配後24日)のメルケル細胞と比較すると胎生20日のメルケル細胞の方が細胞質,核,穎粒ともに大型であった,また単位面積当りのメルケル細胞顆粒数は加齢とともに増加する.胎生20日では English15)16)17)の記載している transitional cell も観察され,この細胞が軸索の付着なしで表皮内に存在しうる可能性が示唆された.この細胞の起源はまだわからないが,今回の研究からはどちらかといえば上皮性細胞由来を想像させるようである.
  • 上田 恵一, 大瀬 千年, 小森 泰, 小森 万智生, 丸尾 充, 外松 茂太郎, 中安 清
    1981 年 91 巻 1 号 p. 13-
    発行日: 1981年
    公開日: 2014/08/21
    ジャーナル 認証あり
    ICR マウスにおける DMBA 皮膚腫瘍の系と C3Hマウスにおける移植腫瘍の系について,3H-TdR フラッシュ,標識法による標識率,ならびに電顕オートラジオグラフィーによって標識細胞の特徴的所見を検索すると共に,腫瘍細胞をパラローズアニリソーフォイルゲン染色後,落射型顕微鏡によって核 DNA を定量した. DMBA 皮膚腫瘍は,乳頭腫様小腫瘍から大型の悪性腫瘍に至る種々な悪性度を示す腫瘍が得られ,標識率は前者では5~13% の間にあり,後者では7~32% の間にあって高く,移植腫瘍では17~45%の間にあって高いものが多かった標識細胞の電顕的特徴は,いずれも核は電子密度が高く,核内にクロマチンが散在してみられ,細胞質内にはリボソームが多く,ポリソームをなしていた.さらにミトコンドリアや小胞体が多く,トノフィプリルの形成は悪いものが多かった. DNA 量とその分布は DMBA 腫瘍では悪性化するに従って,大型の2nの山と小型の4nの山が変形し,平坦な山型となり,多倍体の出現が多く認められ,移植腫瘍ではこの傾向がさらに著明であった.増殖と分化の面から標識率と標識細胞の所見について得た結果と DNA 代謝からみた結果とは,いずれも悪性化に伴ない一致した変化を示すことが認められ,皮膚実験腫瘍モデルとして用いられることを知り得た.
  • 堀 真
    1981 年 91 巻 1 号 p. 25-
    発行日: 1981年
    公開日: 2014/08/21
    ジャーナル 認証あり
    d-d系マウスの背部皮膚に化学発癌剤である 20-Methylcholanthrene の 0.3% acetone 溶液 0.3ml を週2回,12週まで定期的に滴下し,皮膚腫瘍の発生過程を20週まで観察した.3週間隔で局所皮膚を生検し,発癌過程,発生腫瘍の組織学的分類および発生母地について組織学的に検索した.腫瘍発生過程は炎症期,肥厚期,腫瘍期とつづき,腫瘍期では papilloma の発生におくれて Keratoacanthomatype squamous cell carcinoma (以下K型SCC)が発生したが,両者間に移動はみられない.組織学的分類では,良性腫瘍として papilloma と proliferating trichilemmal cyst にわけられ,悪性腫瘍は K 型 SCC と spindle cell squamous cell carcinoma の2者がみとめられた.しかしながら,これらの良性腫瘍の一部には異型細胞がみとめられ悪性への potentiality をもつと考えられた. 発生腫瘍の母地は papilloma をのでいて,毛包上皮に由来すると思われた.
  • 堀 真
    1981 年 91 巻 1 号 p. 33-
    発行日: 1981年
    公開日: 2014/08/21
    ジャーナル 認証あり
    化学発癌剤 20-Methylcholanthrene を用いて,マウス皮膚発癌道程を3週間隔て生検し,電顕的に検索した. 第1報で報告したように,電顕的にも,炎症期,肥厚期,癌期が比較的明確に区別され,炎症期の keratinocyte は acantholytic change をおこし desmosome, tonofilament の減少がみとめられる.一方 Setala のいう mitochondria 内inclusion body は多数にみられた. 肥厚期は次にくる癌期への移行期と考えられ,その時期の有棘細胞では,多数のdesmosome tonofllament,rough-surfaced endoplasmic reticulum がみとめられる.しかし mitochondria内inclusion body は炎症期に比較して減少し,細胞質には glycogen 顆粒の出現がみられるようになる.癌期では desmosome, tonofilament は減少し, inclusion body の消失に反比例して多量の glycogen 顆粒の蓄積がみとめられるようになった. これらの所見より inclusion body は癌に特異な物質でないにしても,正常細胞から癌細胞への移行斯における特殊な代謝による産物ではないかと推察した.
  • 堀 真
    1981 年 91 巻 1 号 p. 43-
    発行日: 1981年
    公開日: 2014/08/21
    ジャーナル 認証あり
    化学発癌剤 20-Methylcholanthrene (以下20MC)によるマウス皮膚癌作製実験系に助発癌因子と考えられている croton oil, 臨床的に皮膚癌の治療に用いられる経皮感作原性物質 2-4-dinitrochlorbenzene (以下DNCB),および,それとは交差感作のみとめられない oxazolone を併用し,それぞれの発癌率,発癌過程の光顕的,電顕的検索をおこなった.また同時に,各動物の腫瘍病巣における T-Iymphocyte の動態を HorwitZ8) の方法により acidα-naphthy1 acetate esterase(以下ANAE)染色を行なって観察した その結果, DNCB および oxazolone と 20MC 併用群では 20MC 単独群および croton oil-20MC 併用群に比し,有意の差をもって発癌が抑制された. 組織学的,電顕的検索では, 20MC 単独群, crotonoi1-20MC 併用群で好中球浸潤が著明であるのに対し,DNCB, oxazolone 併用群ではリンパ球浸潤が優位であり,さらに,電顕的には,表皮keratinocyte にリンパ球の細胞質突起が突入する所見がみとめられた. ANAE 染色標本では, DNCB, oxazoloneと20MC 併用群で実験初期より局所皮膚への T-lymphocyte の浸潤がみとめられ,終了時まで持続したのに対し 20MC 単独群 croton oil-20MC 併用群では,腫瘍塊の形成にともなって初めてみとめられたにすぎなかった.これらの実験結果より,発癌の抑制は DNDB, oxazolone による感作にもとづく T-lymphocyte の局所への浸潤によるものであり,さらに,これら感作原性物質と腫瘍細胞が結合することにより,より一層,抗原性の高まつた腫瘍細胞を target cell として T-lymphocyte が攻撃するためであろうと考えた.
  • 吉野 和廣, 松尾 聿朗
    1981 年 91 巻 1 号 p. 53-
    発行日: 1981年
    公開日: 2014/08/21
    ジャーナル 認証あり
    スクワレン溶液に長波長紫外線(UVA)を照射すると,スクワレン過酸化物が生成される.また,スクワレン溶液に 8-リトキシソラレン(8-MOP)を添加して UVA照射すると,その過酸化物生成量はさらに増加した.この2つの反応系に一重項励起酸素分子(1O2)の消去剤を添加すると,スクワレソ過酸化物の生成は両者共に滅少した.また,溶媒として軽水の代りに重水を用いると,両者共スクワレン過酸化物の生成量は増加した. これらのことから,スクワレソの UVA 照射による同過酸化物の生成はスクワレン単独でも1O2が関与し,さらに 8-MOP 存在下では, 8-MOP 光増感酸化による1O2により増強されることが示唆された.
  • 手塚 正, 山崎 紘之, 平井 玲子
    1981 年 91 巻 1 号 p. 59-
    発行日: 1981年
    公開日: 2014/08/21
    ジャーナル 認証あり
    Hyperkeratosis lenticularis perstans の微小な初期の皮疹を採取, -SH 基特異的蛍光染色(DACM染色)を行い,-SH 基,S-S 結合の変化を観察した.遊離の -SH 基による蛍光は,基底細胞では基底膜への突起状として明瞭にみとめられ,有棘細胞上層から顆粒細胞にかけて細胞膜に著しい蛍光がみとめられた.又,基底細胞,有棘細胞,角層細胞の細胞膜部分,基底細胞の核小体にも蛍光がみとめられた.これらの正常人表皮細胞でもみとめられる所見の他にこの皮疹に特徴的所見として病変の中心部の顆粒細胞,角層細胞の細胞質内にびまん性の強い蛍光がみとめられた.このような蛍光は S-S 結合のみによる蛍光反応ではみとめられなかったので,この疾患の皮疹部の穎粒層で -SH 基に富んだ蛋白が大量に生じ,しかも酸化されない状態で存在していることを示している.又,基底細胞の基底膜への突起の一部に点状の強い S-S 結合による蛍光が観察された.
  • 1981 年 91 巻 1 号 p. 63-
    発行日: 1981年
    公開日: 2014/08/21
    ジャーナル 認証あり
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