日本皮膚科学会雑誌
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レチノイドの表皮ランゲルハンス細胞に及ぼす影響について
小林 勝
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1983 年 93 巻 7 号 p. 763-

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抄録

レチノイド(etretinate)を CH3/He マウスに連日経口投与し,表皮ラングルハンス細胞(L細胞),ことにその分布密度と形態に及ぼす影響について検討した.L 細胞の分布密度は投与量(4mg/kg および 16mg/kg)と部位(耳,足脈,尾)により若干の差はあるが,ほぼ同様の傾向を示して変動した.すなわち,投与開始直後にL細胞は一過性に増加するが,以後は減少傾向を示し,2週後には最低値となる.しかし,その後投与を続けることにより回復傾向がみられた.このL細胞の分布密度の変動は表皮の厚さがレチノイド投与により変動する経過ときわめてよく一致た.一方,レチノイド投与により胞体が縮少し,樹枝状突起が細長く伸びた L 細胞が多数観察された.足蹠皮膚の垂直切片における観察では,投与2週日以後,基底層から真皮上層にla抗原陽性の樹枝状細胞がみられ,L細胞かあたかも真皮へ脱落しかけているような所見が得られた. 以上の実験を通じて,L 細胞は表皮内において抗原提示細胞としての機能を果すべく,角化細胞と密接な関連を保ちながら,その分布密度を調節し,恒常性を保ちつつあることか考えられた.

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© 1983 日本皮膚科学会
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