抄録
症例は48歳女.長期間にわたる紫外線照射が原因で右手掌に有棘細胞癌が生じた.切除・全層植皮術後に再発をきたし,手関節,末梢神経への癌細胞浸潤を認めたため前腕切断術を施行した.約1年後,断端部に再発をみたため上腕切断術を行なうとともに,組織学的検索によって再発,転移の病態の解明に努めた.その結果,再発腫瘤は尺骨神経を中心に増殖しており,かつ尺骨神経内を上行性に約13cmの長さにわたって癌細胞の浸潤を認めた.自験例は,末梢神経を通じて再発,転移したことは疑いのないところであるが,かかる症例の報告ははなはだ稀のようである.神経が有棘細胞癌(皮膚癌)の進展の径路となりうる可能性,要因について,自験例ならびに文献に通じて若干の考察を行なった.