日本皮膚科学会雑誌
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94 巻, 13 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 岩原 邦夫
    1984 年 94 巻 13 号 p. 1499-
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    菌状息肉症14例,Sezary症候群1例,計15例の皮疹部を用い核周囲の長さ/√核の面積で示される核の切れ込み具合を表す指数,すなわちNuclear contour index(NCI)(核の切れ込み指数)および核/細胞質,面積比(N/C),ヘルパー/サプレッサーT細胞比につき,モノクローナル抗体を用いて染色後検討したその結果モノクローナルT細胞抗体陽性細胞(n≒100)の平均NCIは,陰性細胞のそれより高く,紅斑期,腫瘍期と病勢の進行と共に増加した.N/Cは,病勢の進行に伴う顕著な増加はみられず,従って核の切れ込み指数との相関関係はみられなかった.菌状息肉症皮疹部における浸潤細胞の比率を検討した結果,サプレッサーT細胞は病初期に,ヘルパーT細胞は病後期に高率に観察された.一方対照とした円板状紅斑性狼瘡,結節性痒疹,光沢苔癬,滴状類乾癬などの慢性良性皮膚疾患において浸潤するT細胞の核切れ込み指数は,菌状息肉症やSezary症候群に比して明らかに低かった.従ってこれらT細胞を対象としたNCIの測定は,菌状息肉症,Sezary症候群の悪性度を知る上で有力な基準となりうるものと考察された.
  • 正橋 寿子, 真家 興隆, 高橋 伸也
    1984 年 94 巻 13 号 p. 1509-
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    症例は48歳女.長期間にわたる紫外線照射が原因で右手掌に有棘細胞癌が生じた.切除・全層植皮術後に再発をきたし,手関節,末梢神経への癌細胞浸潤を認めたため前腕切断術を施行した.約1年後,断端部に再発をみたため上腕切断術を行なうとともに,組織学的検索によって再発,転移の病態の解明に努めた.その結果,再発腫瘤は尺骨神経を中心に増殖しており,かつ尺骨神経内を上行性に約13cmの長さにわたって癌細胞の浸潤を認めた.自験例は,末梢神経を通じて再発,転移したことは疑いのないところであるが,かかる症例の報告ははなはだ稀のようである.神経が有棘細胞癌(皮膚癌)の進展の径路となりうる可能性,要因について,自験例ならびに文献に通じて若干の考察を行なった.
  • 麻生 和雄, 天野 倫子, 関谷 栄, 駒谷 昭夫
    1984 年 94 巻 13 号 p. 1515-
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    著者らは,乾癬性関節炎,掌蹠膿疱症の繁りから,乾癬胸鎖部をレ線より鋭敏な骨シンチグラフィーにより検索したいと考え,乾癬38例,掌蹠膿疱症5例に99mTc-MDPによる骨シンチグラフィーを施行した.乾癬では全症例の63%,掌蹠膿疱症では60%に胸鎖骨,第1肋軟骨に異常集積を認めた.対照56例の胸鎖部での集積は38%にみられたが,乾癬での集積は,生理的な対照例を超えた異常と考えられた.
  • 佐久間 満里子
    1984 年 94 巻 13 号 p. 1521-
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    肝障害を随伴し,広範囲に典型的な皮疹を有したLichen myxedematosusの1例を報告した.肝組織は慢性肝炎非活動型を示し,酸性ムコ多糖類の沈着は認めなかった.血清M蛋白は伴わなかったが,melphalanによる臨床的,組織学的な有効性を認めた.肝機能は皮疹の改善と共に軽快傾向を示した.また本邦報告例についてparaprotein,肝障害の随伴頻度およびその肝障害の肝機能検査値の性状を検討し,本邦例ではparaproteinに比して肝障害がより高率(特に男子において)に随伴していることをみた.また皮疹にアルコールの関与が疑われる症例も散見されたが,肝機能検査上は随伴する肝障害をアルコール性肝炎と推測することはできなかった.
  • 石井 則久, 青木 一郎, 相原 雄幸, 奥田 研爾
    1984 年 94 巻 13 号 p. 1531-
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    卵白リゾチーム(HEL)特異的遅延型過敏反応性T細胞のエフェクターハイブリドーマ(TDTHハイブリドーマ)はAKRマウス由来のBW5147胸腺腫細胞と,感作C3H/Heマウスより得たT細胞とを融合することにより得られた.TDTHハイブリドーマの膜表面の抗原性はLyt-1+2-,Thy-1.2であった.TDTHハイブリドーマと抗原を足蹠に注射し,24時間後の足蹠腫脹反応を調べると,H-2抗原のI-A亜領域がC3H/Heマウスと同じI-Akである場合に腫脹反応が陽性になった.この腫脹反応は抗I-Ak血清処理で低下したが,抗K,抗I-E血清処理では変化せず,TDTHハイブリドーマは遺伝的にI-Ak拘束性であることがわかった.またヘルパーT細胞の関与するT細胞増殖反応に対して,TDTHハイブリドーマは何ら増殖活性を示さず,このハイブリドーマはヘルパーT細胞とは異なることがわかった.
  • 高橋 博之, 堀越 貴志, 神保 孝一
    1984 年 94 巻 13 号 p. 1537-
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    皮膚悪性黒色腫の主要前駆病変として,①異形成母斑(dysplastic nevus)及び,②先天性色素性母斑(congenital nevus)が考えられている.dysplastic nevusは遺伝的支配を受け,常染色体優性遺伝を示す.その臨床分類は家族内に2人以上の患者を持つfamilial dysplastic nevi(dysplastic nevus syndrome)と単発例のsporadic dysplastic neviに分けられる.著者らは過去4年間に受診した318例の色素性母斑の患者中臨床的,組織学的検索から9例をdysplastic neviと診断した.うち1例がepithelioid-cell melanocytic dysplasia,8例がlentiginous melanocytic dysplasiaの組織像を示した.また家族内に皮膚悪性黒色腫の発生はなかったが,3家族に他臓器悪性腫瘍(肺癌,胃癌,骨肉腫)を認めた.dysplastic nevusの疾患概念,臨床像,組織像を中心に悪性黒色腫との関係につき考察した.
  • 佐藤 昌三, 実川 久美子, 末木 博彦, 安西 喬
    1984 年 94 巻 13 号 p. 1547-
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    エックリンらせん腫の2症例からえた手術材料を電子顕徴鏡的に観察した.腫瘍実質は上皮細胞,筋上皮細胞,非上皮性細胞から構成される.上皮細胞の構築はエックリン導管部のそれに近いが,エックリン汗腺分泌部および移行部への形態分化像は明らかでない.筋上皮細胞は定型的形状のものから上皮細胞との細胞鑑別が因難なものまでがみられる.実質にはリンパ球,組織球,Langerhans細胞が存在し,変性した上皮細胞と誤認されやすい.腫瘍間質では神経線維が豊富で,本症の有痛性が神経線維と間質構造に関連する可能性が示唆された.
  • 青木 重信, 加藤 英行, 北島 康雄, 矢尾板 英夫
    1984 年 94 巻 13 号 p. 1557-
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    EBウイルス感染を原因として発症したinfantile papular acrodermatitisの1例を報告した.患者は1歳2ヵ月の男児.感冒様症状に伴い,紅色丘疹が両下腿に出現し,急速に四肢,殿部,顔面に対側性播種状に多発した.瘙痒は伴なわない.表在リンパ節は腋窩,ソケイ部で触知された.血液検査でリンパ球増多や異型リンパ球の出現はなかったが,軽度の肝障害を認めた.Paul-Bunnel反応は陰性.血清ウイルス学的に,HBs抗原は陰性であったがEpstein-Barrウイルス(以下EBV)のviral capsid antgienに対する抗体(VCA抗体)およびearly antigenに対する抗体(EA抗体)が上昇しており,EBウイルス感染であることが確認された.
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