癜風における角質層,顆粒層の変化を電顕形態学的に観察した.角質層では幅0.4μ程度の扁平な,突起の少ない細長い細胞が30数層堆積し,電子密度は上層の方が高い.角質層に平担な堆積細胞間は一部開大しており,desmosomeは全般に少なく,小さい.細胞質の一部が膨化した細胞が認められ,同部は線維様構造がみられず空虚である.角質層と顆粒層の間に移行細胞(transitional cell)が観察された.本細胞には核の有無,核膜の明瞭さ,細胞質の電子密度,keratohyalin顆粒の量の差異により形態の異なる3種類が存在した.顆粒層には著変はみられなかった.移行細胞の存在は,菌要素の侵入による角化形式の何らかの異常を思わせる.菌要素は角質細胞の内外に観察され,その周囲に空隙が認められた.また,菌要素に隣接する細胞の細胞質の線維様構造は疎になり,細胞全体が膨化,膨出する像が観察された.これらの所見から菌要素のkeratinolyticな作用が推定された.