昭和30年夏に発生した砒素ミルクによる乳児集団砒素中毒被災者の青年後期における皮膚症状について,西日本を中心とした19医療機関で追跡調査を行った.この結果,受診者547名中50名に砒素によると思われる皮疹を認めた.そのうちわけは,躯幹や四肢の点状白斑47名,掌蹠丘疹状角化症13名,両者の併発が10名であった.今回の調査により,乳児期における砒素中毒症の一部の例では成人後も皮膚症状が継続してみられることや,なかには加齢とともに新らたな皮膚症状が生じてくる例のあることが明らかになった.今後もこれらの皮膚症状を有する例を中心にした長期の経過観察が必要と思われる.