hydrocortisone(HC),dexamethasone(DM),triamcinolone acetonide(TA)の非標識あるいは3H標識化合物を含むクリームを調製し,ScotchRテープで角層を剥離したラットに外用して,各被験薬剤の全身および局所への作用ならびに経皮吸収後の体内分布と排泄量を比較検討し,以下の結果をえた.1)非標識クリームを連続塗布したラットの体重変動を追求し,体内臓器(胸腺,副腎,脾臓)の重量を測定した結果,全身への影響(副作用)はDM≧TA>HCの順に強かった.2)同一ラットで測定した皮膚の厚さの変動から,局所への影響もDM≧TA>HCの順に強く,全身への影響の順位と一致した.3)標識クリームを用いた全身オートラジオグラムにより経皮吸収に基づく放射活性の分布を観察すると,腸管内容物>肝臓>腎臓の順に多く,副腎,脾臓にも極く僅かに分布を認めたが,胸腺には認めなかった.4)標識クリーム塗布後の臓器中の放射活性を測定した結果,非標識クリームで前処置すると,肝臓,次いで腎臓に多く分布したが,他の3種の臓器ではほぼ同等であった.前処置しないと分布量は肝臓>腎臓>副腎>脾臓≧胸腺の順に大であった.5)同一ラットの排泄物中の放射活性の測定から,被験薬剤の角層剥離皮膚における経皮吸収はHC>DM>TAの順に多く,正常皮膚における順位と異なり,また吸収量も著しく多かった.6)非標識クリーム前処置群と無処置群について放射活性を比較すると,無処置群で約2倍の量が排泄されており,経皮吸収におよぼす連続塗布の影響が示唆された.以上より,コルチコステロイドは経皮吸収された後に特定の臓器に蓄積されることなく,ほとんどが肝臓,腸管部を経て糞中に排泄され,腎臓,膀胱よりの尿路系への排泄は少なく,各種コルチコステロイドの全身への影響は標的臓器への蓄積で発現するのではなく,標的臓器への薬理活性の強弱あるいは標的臓器の感受性の大小に基因することを実証しえた.また,正常皮膚と角層剥離皮膚での吸収量の相違と連続投与における吸収量の変動とから,適用部位,外用方法について考察し,さらにコルチコステロイドの影響の発現機序,連続投与の経皮吸収への影響などについても考察した.
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