1985 年 95 巻 4 号 p. 455-
異形成母斑(dysplastic melanocytic nevus:DMN or dysplastic nevus:DN)は近年,皮膚悪性黒色腫の主要前駆病変の1つと考えられるようになり,臨床的,組織学的,遺伝学的な面を含めた多方面より検索がおこなわれつつある.しかし,臨床的,組織学的診断基準はある程度確立しているにもかかわらず超微構造的検索に関する報告は極めて不充分である.著者らは,前報にてDMN患者9症例に関する皮膚病変の臨床像および組織学的所見につき報告した.今回は,これら9症例の超微構想を検索し,DMNが皮膚黒色腫細胞に認めるmelanosomeの形態異常と多くの共通する所見を有する事を確認した.すなわち,名症例および同一症例でも個々の病変において差はあるもののdysplastic melanocyteに認められるmelanosomeは,組織学的にmelanocytic dysplasiaが高度になるに従い黒色腫細胞に認められる異型melanosomeにきわめて類似するようになり,又,その他の細胞内小器官の形態,発達異常が著明になる傾向があった.