各種の汗器官腫瘍について,peroxidase-anti-peroxidase(PAP)法を用いて,S-100蛋白陽性の腫瘍細胞の有無を免疫組織化学的に検討した.S-100蛋白は,mixed tumor of the skinで特に多数の腫瘍細胞に,しかも強陽性にみられ,eccrine spiradenoma,hidrocystomaも,一部陽性細胞を有していた.しかし,nodular hidradenoma,eccrine poroma,syringomaではS-100蛋白は認められなかった.汗器官腫瘍についての従来の電顕的所見,酵素組織化学的所見や正常汗器官でのS-100蛋白の染色態度を踏まえると,S-100蛋白陽性細胞には,mixed tumor of the skinにみられるような筋上皮細胞への分化を示すものと,eccrine spiradenoma,一部のhidrocystomaにみられるようなエックリン腺分泌部の細胞へ分化するものがあると考えられた.さらに,同時にcarcinoembryonic antigen(CEA)についても免疫組織化学的に検討し,汗器官腫瘍を診断する際の有用性について両者を比較した.CEAは汗器官腫瘍を他の腫瘍グループより区別することにおいては有用であるが汗器官腫瘍内で個々を鑑別するためには適さないと思われ,他方S-100蛋白は,汗器官腫瘍内での腫瘍細胞の起源,分化方向を知る指標となると考えられた.
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