日本皮膚科学会雑誌
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Etretinate投与によるモルモット表皮細胞の変化
野村 洋文
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1985 年 95 巻 9 号 p. 943-

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抄録

Etretinate投与における表皮細胞の変化をみるために,モルモット表皮細胞をPercollを用いて分画し,SH基およびS-S結合,核DNA及びRNAを測定し,さらに切片標本における表皮細胞のレクチン結合様式について検索した.染色は,SH基及びS-S結合はN-(7-dimethyl-amino-4-methyl-3-coumarinyl)maleimide,核DNA及びRNAはAcridine Orangeを用い,レクチンによる染色はパラフィン包埋を用い間接標識法によりCon A,RCA-I,PNA,SBA,DBAの5種を行った.SH基量は,基底細胞分画でEtretinate投与14日で減少した.有棘細胞および顆粒細胞分画では投与3日,7日,14日となるに従って減少した.S-S結合量は,ほとんど変化なかった.基底細胞のDNA量,RNA量より算出した細胞周期により,G0/G1比は投与1日目で減少し,以後次第に投与前の状態に近づいた.レクチンの結合様式の変化は,Con A及びRCA-Iでは,変化はほとんど認められなかった.PNAは投与7日,14日で有棘層及び顆粒層で減弱した.SBAでは投与1日より有棘層及び顆粒層において減弱したが,14日では投与前のものと同様であった.DBAはSBAとほぼ同様な傾向を示した.これらの結果より,Etretinate 5mg/kg/day投与による表皮細胞の変化は,G0期の減少を伴う細胞周期の促進と,細胞膜糖鎖の面からみた分化の遅延にもとづくものと思われる.

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© 1985 日本皮膚科学会
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