日本皮膚科学会雑誌
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青年性扁平疣贅の治癒率
上田 由紀子
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1985 年 95 巻 9 号 p. 985-

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抄録
青年性扁平疣贅には,自然治癒があることが知られているが,発病から自然治癒までの期間にはばらつきがあり,2年前後に1つのピークがある可能性がある.しかし,治療することにより,初診から3ヶ月で52%の例が,6ヵ月で66%,1年で77%が治癒している.当科での治癒率は85%であった.治癒率は,皮疹の数には影響を受けないが,男子例では女子例より早く治癒する傾向があり,また小児例では成人例より早く治癒する傾向があった.罹患期間は治癒率と相関しないが,治癒までの期間とは相関が認められた.すなわち,罹患期間の短い症例ほど短い治療期間で治癒する傾向が見られた.また未治療の症例が早く治癒する傾向がみられた.色素沈着のある症例の治癒率は低かった.治療薬剤はプラセボや暗示療法を含めて,治療方法による治癒率の有意差は認められなかったので,いずれの治療法もある程度の治癒率はえられるが,薬剤の薬理作用による効果とはいえないと考えられた.しかし,罹患期間の平均が24,1ヵ月であるにもかかわらず,治療を開始すると,2ヵ月で3分の1,3ヵ月で2分の1の患者が治癒していることから,これらの症例は,やはり治療するという暗示効果により治癒したものと考えた.治療法別にみると,各々の治療法単独では,その治療法を始めて1~2ヵ月目に治癒する例が多く,治癒率は3ヵ月以降漸減するので,数種の治療方法で,適宜治療法を変更しながら治療することが,その暗示効果を含めて,現在では最も良い方法であると考えた.
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© 1985 日本皮膚科学会
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