抄録
日光弾力線維症の本態を明らかにするために項部菱形皮斑10例(男性)を材料として,本症に特徴的な弾力線維様物質の光顕的,電顕的観察を行うとともに,免疫組織化学的検索を行った.項部菱形皮斑真皮上層の弾力線維様物質は,エラスチカ・ワン・ギーソン(E.v.G.)染色で弾性線維と同様に黒紫色に濃染した.電子顕微鏡で連続切片の一つを通常二重電子染色で,次ぎの切片をタンニン酸加二重電子染色で観察すると,弾力線維様物質は,タンニン酸で濃染する細かい網目状に広がるエラスチンと,その網目を埋める細顆粒状またはフィラメント状物質から成っていることがわかった.免疫組織化学では,このような網目状のエラスチンが,抗エラスチン抗体とよく反応し,加えて真皮中層では細顆粒状部分も一部陽性反応を示した.一方,弾力線維様物質はマイクロフィブリルと交叉反応をする抗ヒト胸管リンパ細胞モノクロナール抗体(HB-8)と陽性反応を示さず,電顕レベルでも細顆粒状部分やフィラメント状物質には全く反応性を示さなかった.以上の所見より,日光弾力線維症では,弾性線維のエラスチン成分が,はじめはエラスチンとしての抗原性を保ちながら細顆粒状に変性するが,最終的な弾力線維様物質の細顆粒状部分とフィラメント状物質にはエラスチンとしての抗原性が全く失われていること,また弾力線維様物質がHB-8に全く反応しないことより,弾性線維のマイクロフィブリルは変性して抗原性を失ったか,あるいは全く消失していることが明らかとなった.