日本皮膚科学会雑誌
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Sjogren症候群皮疹の真皮上層血管の微細構造および再管状構造体(MTS)
矢崎 喜朔臼田 俊和飯田 芳樹稲坂 博大越 尚深谷 嘉英
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1987 年 97 巻 1 号 p. 9-

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抄録
Sjogren症候群(SjS)13症例に応じた皮疹(環状紅斑3例,斑状丘疹性紅斑3例-SLE,MCTD疑の合併例を各々1例含む,女子顔面黒皮症様色素沈着3例,Chilblain lupus合併による角化性紅斑2例,Atrophie blanche様皮疹1例,広汎型DLE合併による円板状皮疹1例)の真皮上層血管を透過型電子顕微鏡にて観察し,その形態学的変化と細管状構造体(MTS)出現の有無について検索した.対照としてエリテマトーデス(LE)7症例についても観察した.SjS真皮上層血管の微細構造として,内皮細胞単位で細胞小器官が減少し,細胞質の染色性が低下しているもの,小胞体の開大による空胞化がみられるものなど内皮細胞の変性像がみられた.これらの変化はSjSに他の膠原病を合併した症例に,より顕著に認められたが,LEに比べて程度は軽く,LEにみられた原形質膜の破壊像は認められなかった.内皮細胞間(接合)の離開を示す血管が認められたが,その数は少なかった.有窓性毛細管が少数認められた.血管基底板は多層を示すものが多く,LEとの間に差はみられなかった.Chiblain lupusを合併した一症例に、フィブリンと赤血球の沈着による内腔の閉塞と内皮細胞の著しい変性像が認められたが,この症例以外ではフィブリンの強い沈着はみられず,また高電子密度の塊状の滲出物質の血管壁や血管周囲への沈着は認められなかった.MTSはSjS13症例中7症例に認められた(LEでは7症例全例が陽性).MTS陽性の症例は広汎型DLE合併例を除くと20代~40代の若成年者で,環状紅斑や斑状丘疹性紅斑を呈し,MTS陰性例は50代~70代の中高齢者であり,女子顔面黒皮症様色素沈着やChilblain lupusの皮膚症状を呈した症例であった.以上の真皮上層血管の微細構造とMTSの出現より考察すると,SjSに関係の深い皮膚症状の血管変化はLEと同種の機序による可能性が考えられた.
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© 1987 日本皮膚科学会
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