日本皮膚科学会雑誌
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有棘細胞癌における浸潤リンパ球の免疫組織化学的観察
佐井 嘉之大橋 勝名倉 宏
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1987 年 97 巻 10 号 p. 1117-

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抄録

有棘細胞癌10例について,モノクローナル抗体(Leuシリーズ)を用いた酵素抗体間接法により,光顕および電顕にてTリンパ球のサブセットの検索を行なった.対照として細胞性免疫の1つであるDNCBによる接触過敏症10例を用いた.本症で浸潤する細胞はTリンパ球が多数を占め,部位によりそのサブセットの分布様式は大きく異なり,腫瘍内ではLeu2a陽性細胞がLeu3a陽性細胞に比し10例中9例において優位であり,腫瘍胞巣から離れるに従いLeu3a陽性細胞が増加する傾向が認められた.免疫電顕では,Leu2a陽性細胞は腫瘍細胞に小細胞突起あるいは広い面で接着しており,腫瘍細胞には種々の変性像が観察された.リンパ球浸潤の強い腫瘍部位ではリンパ球と腫瘍細胞膜にHLA-DR抗原は腫瘍細胞内で核の内外膜腔と粗面小胞体に存在した.また,腫瘍内および腫瘍周囲部を中心に浸潤するLeu2a陽性細胞の一部分はIL-2レセプターが発現していた.一方,DNCB接触過敏症においても,浸潤する細胞はTリンパ球が主体であったが,そのサブセットは10例全例Leu3a陽性細胞がLeu2a陽性細胞に比し優位であった.Leu7陽性細胞の比率は,有棘細胞癌群と対照群ともに正常人血中レベル範囲内であった.

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© 1987 日本皮膚科学会
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