日本皮膚科学会雑誌
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97 巻, 10 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 柿沼 寛
    1987 年 97 巻 10 号 p. 1075-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
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    正常表皮細胞と有棘細胞癌(HSC-1)の培養を行い形態観察とともに培養細胞における細胞膜表面タンパクを124IにてラベルしSDS-PAGE法(sodium dodecyl surfate polyacrylamide gel electrophoresis)にて分離し,さらにautoradiographyを行い細胞膜表面タンパクを比較検討した.1.を正常表皮細胞およびHSC-1は各々異なった増殖態度をとるものの細胞各々の形態的な差異は認められない.2.正常表皮細胞およびHSC-1では細胞全体のタンパク構成はほぼ同じであるが細胞膜表面タンパク(125I-Iabeled protein)については各々異なったクラスのタンパクをもつ.3.正常表皮細胞の細胞膜表面タンパクはトリプシンに対しほとんど影響されない.4.有棘細胞癌(HSC-1)のヨード化される細胞膜表面タンパクはトリプシンに対し感受性が高い.5.HSC-1ではトリプシンの影響から1日で細胞膜表面タンパクの構造的な回復が起っている.6.HSC-1はトリプシン感受性の高い細胞膜表面タンパクを合成している可能性がある.
  • 三原 一郎
    1987 年 97 巻 10 号 p. 1081-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    慢性苔癬状粃糠疹(滴状類乾癬)および急性苔癬状痘瘡状粃糠疹を臨床的,組織学的に比較検討し,以下の知見を得た.1.歴史的背景また種々の成書の記載より,滴状類乾癬と慢性苔癬状粃糠疹は同一疾患(同義語)として差し支えない.2.慢性苔癬状粃糠疹(滴状類乾癬)と急性苔癬状痘瘡状粃糠疹との異同については,臨床的,組織学的な両疾患の多岐にわたる類似性,またどちらかも決めかねる中間的病態の存在より,同一線上の疾患とするのが妥当と考える.3.滴状類乾癬という疾患名は局面状類乾癬との混同を避けるため,また急性痘瘡状粃糠疹との類似性を強調するためにも慢性苔癬状粃糠疹とした方が適当と考える.4.慢性苔癬状粃糠疹の基本的組織像は表皮真皮境界部の液状変性,真皮浅層の血管周囲性リンパ組織球浸潤,角層における部分的不全角化であり,これにときに表皮細胞の壊死性変化,角層内好中球の存在を伴うものである.この所見は急性苔癬状痘瘡状粃糠疹の像に極めて類似していた.
  • 梅澤 明, 神崎 保, 岩瀬 仁勇
    1987 年 97 巻 10 号 p. 1089-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
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    1.ヌードマウス皮下に形成させた人外毛根鞘腫の間質に多量のヒアリン物質が認められた.2.電顕所見よりヒアリン物質の大部分は変化した膠原線維と無構造物質より成り,その膠原線維の横紋は一般の染色法では染色され難かった.3.ヒアリン物質が多量に含まれている外毛根鞘腫塊を酢酸可溶画分,ペプシン可溶画分,ペプシン不溶画分の3画分に分けて,各々アミノ酸分析,糖分析したところペプシン不溶画分とコントロール(ヌードマウス皮膚)との間に大きな差異が認められた.4.すなわちこのペプシン不溶画分は糖分析にて多量の糖を含んでいることが分かった.これをアミラーゼ処理後薄層クロマトグラフィーにて分析したところglucose,maltose,maltotrioseが検出された.しかし,大部分の糖は糖蛋白の形で不溶画分中に残った.5.さらにこの不溶画分をSDS-PAGEで画分し,PAS染色を施したところ分子量約10,000以下の部分に陽性のバンドが認められた.6.以上のことより腫瘍間質のヒアリン物質の主体は,高度に加糖化された低分子糖蛋白質であると推定された.
  • 大山 克巳, 多島 新吾, 西川 武二, 山崎 雄一郎, 荒木 由紀夫, 桜岡 浩一
    1987 年 97 巻 10 号 p. 1095-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
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    35歳,男性,先天性表皮水疱症(Cockayne-Touraine型)の1例を報告すると共に,患者より得られた皮膚,尿,血漿の酸性ムコ多糖及び培養皮膚線維芽細胞の合成する酸性ムコ多糖を分析した.その結果,尿,血漿中の酸性ムコ多糖及び皮膚線維芽細胞の合成する酸性ムコ多糖は正常範囲であった.健常者皮膚ではヒアルロン酸が主要な酸性ムコ多糖であったのに対し,患者の水疱部および水疱辺縁部皮膚では,デルタマン硫酸が主要な酸性ムコ多糖となっていた.以上の結果をふまえて本症における水疱形成と酸性ムコ多糖異常との関連について論じた.
  • 稲冨 徹, 高橋 夫紀子, 本庄 三知夫
    1987 年 97 巻 10 号 p. 1101-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    28歳女,および21歳女の,何れも顔面,頚部,躯幹に生じた壊疽性膿皮症の2例を報告した.両例とも全身的合併症はなく,免疫学的にもほぼ正常範囲内にあった.治療は副腎皮質ステロイドの内服が奏功した.診断について,「細菌感染が直接関与しない,進行性,拡大性の潰瘍」を以て壊疽性膿皮症とすることを提唱し,また,病因については多因子的であり,そのうちの一部は血清中に存在するなんらかの因子で,56℃,30分で非働化されると考えた.
  • 花田 勝美, 千代谷 成史, 鈴木 賢二, 橋本 功, 畑山 一郎, 白取 祐子, 石田 邦夫
    1987 年 97 巻 10 号 p. 1107-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
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    弘前大学医学部付属動物実験施設において確立された弘前ヘアレスラット(HHR)につき,皮膚の光顕的,電顕的観察を行うと共に,既報のヘアレスラットに関する文献的考察を併せて行った.HHRの皮膚は外観が極めて人肌に近く,僅かの軟毛に被われるのみであり,組織では表皮に著変を認めず,真皮で毛嚢の減少とともに毛包性嚢腫が多数認められた.電顕的には一部基底細胞に特異な小胞を認めた他著変はなかった.DOPA反応は陰性を示し,DNCB感作は成立した.HHRは皮膚表面の観察が容易である点皮膚科領域においては有用な実験動物になり得ると思われた.
  • 加藤 直美, 神崎 保
    1987 年 97 巻 10 号 p. 1113-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    最近開発された緑内障治療用点眼液,塩酸ベフノロール含有点眼液による接触皮膚炎の4例を経験した.構成成分のパッチテストで4例とも,主剤の塩酸ベフノロールで陽性反応がみられた.その反応は48時間よりも72時間後に強く,使用濃度の10分の1まで陽性に出た症例もあった.正常人でのパッチテストでは,これらはすべて陰性であった.また各症例とも,1ヵ月~9ヵ月の長期使用を経たのち皮膚炎が発症したことなどから,遅延型アレルギー性接触皮膚炎と診断した.しかし,いずれの症例も,発症後に長期間,同じ点眼液を続けていたことから考えると,塩酸ベフノロールの抗原性は強いものではないようだ.
  • 佐井 嘉之, 大橋 勝, 名倉 宏
    1987 年 97 巻 10 号 p. 1117-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    有棘細胞癌10例について,モノクローナル抗体(Leuシリーズ)を用いた酵素抗体間接法により,光顕および電顕にてTリンパ球のサブセットの検索を行なった.対照として細胞性免疫の1つであるDNCBによる接触過敏症10例を用いた.本症で浸潤する細胞はTリンパ球が多数を占め,部位によりそのサブセットの分布様式は大きく異なり,腫瘍内ではLeu2a陽性細胞がLeu3a陽性細胞に比し10例中9例において優位であり,腫瘍胞巣から離れるに従いLeu3a陽性細胞が増加する傾向が認められた.免疫電顕では,Leu2a陽性細胞は腫瘍細胞に小細胞突起あるいは広い面で接着しており,腫瘍細胞には種々の変性像が観察された.リンパ球浸潤の強い腫瘍部位ではリンパ球と腫瘍細胞膜にHLA-DR抗原は腫瘍細胞内で核の内外膜腔と粗面小胞体に存在した.また,腫瘍内および腫瘍周囲部を中心に浸潤するLeu2a陽性細胞の一部分はIL-2レセプターが発現していた.一方,DNCB接触過敏症においても,浸潤する細胞はTリンパ球が主体であったが,そのサブセットは10例全例Leu3a陽性細胞がLeu2a陽性細胞に比し優位であった.Leu7陽性細胞の比率は,有棘細胞癌群と対照群ともに正常人血中レベル範囲内であった.
  • 片山 洋
    1987 年 97 巻 10 号 p. 1129-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
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    ロイコトリエンB4(LTB4)の持つ強力な好中球誘引作用を利用して白癬に対するLTB4外用療法を行った.合成LTB4(10μg/ml50%エタノール)を4例の臨床形態の異なる白癬患者皮疹部に週1回づつ塗布した.皮疹の大きさに応じて5~90μl用いた.その結果踵部後面の角化性紅斑局面は5週間で,趾間浸軟型皮疹は7週間で完治した.足底に多発する小水疱,小膿疱のそれぞれは2週間で消失した.体部の隆起性環状紅斑は1回の外用のみで大部分が消失した.いずれにおいても特に副作用は認められなかった.以上よりLTB4外用は今後表在性白癬に対する治療法の1つとして用いられ得るものと思われた.なお,LTB4を治療薬として用いたのは世界的にもこれが最初である.
  • 馬場 俊一, 鈴木 啓之, 川端 真人, 井口 和幸, 山口 昇
    1987 年 97 巻 10 号 p. 1133-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
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    マダニ刺症に続発したLyme病(63歳,男子)の1例を報告した.マダニ(Ixodes persulcatus)が腹部に咬着後,この部を中心に遠心性に拡大する巨大な慢性遊走性紅斑が生じ,紅斑は四肢にも達した後,約7週間後に自然消褪した.本例は血清学的検査により,Borrelia burgdorferiに対する抗体が証明され,Lyme病と診断された.本例は血清学的に確認しえた,マダニ刺症に続発したLyme病としては本邦報告の最初の例と思われる.
  • 1987 年 97 巻 10 号 p. 1137-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
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