日本皮膚科学会雑誌
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膿瘍型白癬を伴った慢性汎発性白癬
山口 茂光松崎 照樹設楽 篤幸岡 吉郎
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1987 年 97 巻 4 号 p. 445-

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抄録

本症例は爪の病変を含む広範な表在性白癬が慢性に経過し,これに皮下膿瘍の合併がみられたものである.皮膚表面,膿瘍壁及び壊死組織の培養でいくつかの肉眼的に異なる形態を示す菌株が得られたが,顕微鏡的形態はいずれも同一で,すべての菌株をTrichophyton rubrumと同定した.免疫学的検索から血清IgE高値,細胞性免疫能の低下のほか,血清中に免疫抑制因子の存在が示唆された.血清による免疫抑制はグリセオフルビン内服によって改善することも明らかになった.以上より,細胞性免疫の低下は白癬菌感染のための高IgE血清による2次的なものと推論した.この細胞性免疫の低下が更に重篤な白癬菌感染をおこすという,悪いcircuitの存在が推測された.このcircuitの形成にはsuppressor T細胞の機能異常が関与している可能性も否定できない.自験例は重篤な基礎疾患がなくとも,軽度の免疫異常を有する患者が適切な治療を長く受けなかった場合にも本症が発症する可能性のあることを示している.

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© 1987 日本皮膚科学会
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