抄録
補体結合性抗基底膜部抗体及び補体の存在下で,好中球,好酸球,リンパ球及びマスト細胞をDispaseにより調製した表皮シートにそれぞれ反応させると,好中球と好酸球が基底細胞下縁に帯状に接着し,リンパ球とマスト細胞は帯状の接着を示さなかった.これらの所見は,類天疱瘡抗体,補体の存在下で,多形核白血球が基底膜部に遊走し,類天疱瘡における水疱が形成される可能性を支持するものであり,また類天疱瘡皮膚組織でみとめられる,好中球,好酸球,リンパ球及びマスト細胞等の浸潤細胞のそれぞれの役割を検討するうえで,興味深い所見と思われる.白血球浮遊中の好中球及び好酸球の比率と,表皮シート下縁に接着したそれぞれの比率を比較したところ,好酸球に比べて好中球がより接着し易い傾向にあり,患者病変及び抹消血中にみられる好酸球増多には,類天疱瘡抗体,補体由来の走化性因子以外の因子が関与していることが推定された.