日本皮膚科学会雑誌
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皮膚腫瘍(有棘細胞癌,基底細胞上皮腫,脂漏性角化症)の組織侵襲性,転移能と各種proteinases活性との相関について
坪井 良治
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1987 年 97 巻 7 号 p. 813-

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抄録

表皮細胞の代表的腫瘍である有棘細胞癌(SCC)11例,基底細胞上皮腫(BCE)4例,脂漏性角化症(SK)6例を試料に選び,各種proteinases活性と腫瘍の組織侵襲性との相関について検討した.外科的手術より得られた各種腫瘍塊より抽出液を各々調整し,cathepsin BおよびD,plasminogen activator,typeⅠおよびⅣ collagenaseなどのproteinases活性とesteraseであるacid phosphatase活性を測定し,mg proteinおよびμg DNAあたりを基準とした比較検討した.acid phosphatase,cathepsin D活性に差異は認められなかったが,type Ⅰ collagenase活性は,SCCはSKの9倍(p<0.001),BCEはSKの4.3倍(0.05<p<0.1)の値を示し,有意差が認められた.表皮と真皮間部および血管系の基底膜collagenを分解するtype Ⅳ collagenase活性はSCCで高値を示した(0.05<p<0.10).cathepsin B,plasminogen activator活性もSCC,BCK,SKの順に高い値を示したが,collagenaseほどの差異は認められなかった.さらにSCCを癌細胞の分化度により分類すると,未分化な腫瘍ほどcathepsin B,plasminogen activator,type Ⅰ collagenase活性が高い傾向が認められた.これら悪性腫瘍で高値を示した細胞内proteinases活性は,癌細胞内の代謝に関与しているだけでなく,癌細胞周囲とくに基底膜部(表皮-真皮間)や真皮結合織および血管壁などに存在するcollagenを主とするタンパク質構築を分解することにより,腫瘍の組織侵襲性や転移能に深く関与していることが示唆された.

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© 1987 日本皮膚科学会
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