1988 年 98 巻 10 号 p. 1039-
Lichen myxedematosus 患者血清中に,in vivoでマウス皮膚に酸性ムコ多糖を沈着させる因子を検出した.当因子の活性は56℃,30分の熱処理,あるいは透析処理で阻害されず,ハイドロコルチゾン50μgの腹腔内同時投与で抑制された.また患者血清を患者病変部,および正常皮膚由来線維芽細胞の培養液に添加し,酸性ムコ多糖量の変化をみたところ,線維芽細胞の種類による差はなく,また対照正常人血清との間にも差はみられなかった.患者血清による線維芽細胞増殖は,正常人血清によるそれに比し約75%に抑制された.また患者血清中にはヒアルロニダーゼ活性阻害因子が証明された.以上からLM患者血清中にin vivoでのみ線維芽細胞に働く線維芽細胞刺激因子が存在し,当因子の作用により皮膚ムチン沈着症が発現する可能性が示唆された.またそれと同時に,血清中に共存するヒアルロニダーゼ活性阻害因子により皮膚酸性ムコ多糖分解抑制が起こり,ムチン沈着症が完成されるものと考えられた.