日本皮膚科学会雑誌
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組織内脈管内皮細胞の生物学的性状の検討 第4報 内皮細胞特異単クローン抗体の作製
鈴木 裕介衛藤 光増澤 幹男西山 茂夫
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1988 年 98 巻 10 号 p. 1045-

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抄録

ヒト包皮由来微小血管内皮細胞(endothelial cell,EC)を大量に培養し,これを免疫原として,ヒト皮膚組織内で脈管性ECのみを認識する単クローン性抗体MEC-1を作製した.MEC-1の認識する抗原性が第Ⅷ因子関連抗原(factor Ⅷ-related antigen,FⅧ-RAg)と同一であるか別の抗原性であるかを検討するため,免疫原である培養細胞上微小血管ECに対して両抗体の蛍光抗体間接法を施行した.抗FⅧ-RAg抗体では,核周囲の細胞質に全周性に密に分布する顆粒状陽性像を示した.一方,MEC-1では顆粒状陽性像が核に隣接する一部の細胞質のみに偏在する形態をとり,両抗体のEC細胞質における陽性パターンが相異する可能性を示唆した.このため,ヒト皮膚組織上および培養細胞上で両抗体の阻止試験を施行したところ,抗FⅧ-RAg抗体とMEC-1とは互いの陽性像が阻止されず,MEC-1はFⅧ-RAgとは異なる抗原性を認識していると考えられた.次に各種脈管性皮膚腫瘍におけるMEC-1の染色態度を検討した.その結果,毛細血管拡張性肉芽腫における未熟なECの集塊状増殖部位では,強陽性の正常毛細血管に比べて明らかに陽性度が減弱し,悪性血管内皮細胞腫における腫瘍細胞の集塊状部位では陰性化した.毛細リンパ管におけるMEC-1の染色態度は,全く陰性のものから一部のEC管腔壁に沿って僅かに線状の弱陽性像を呈するものまでみられた.MEC-1は,FⅧ-RAgとは異なる脈管性ECの新しいマーカーとして有用性が高いと思われた.

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© 1988 日本皮膚科学会
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