日本皮膚科学会雑誌
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尖圭コンジロームのヒト乳頭腫ウイルス型分類と臨床,組織学的検討
石田 卓石地 尚興本田 まり子新村 眞人
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1988 年 98 巻 9 号 p. 899-

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抄録

臨床,組織学的に尖圭コンジロームと診断した男性43例,女性15例,計58例の外陰,肛門部の疣贅についてヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus,HPV)の型の検索を行った.方法は,ホルマリン固定パラフィン包埋切片を材料としたビオチン化HPV-1,2,4,6,11,16,18型DNAプローブによるin situ hybridization法を施行した.14症例にっいては凍結保存組織よりDNAを抽出し,32Pで標識した上記プローブを用い,Southern blot法を施行し,in situ hybridization法の型特異性の確認を行った.以上の方法でHPVの型の同定できなかった1部の症例に関しては,さらにG.Orthより分与されたHPV-1から36型までのHPV-DNAのそれぞれをtransferしたmembrane filter用いて検索を行い,以下の結果を得た.1)尖圭コンジローム58例中,HPV-6型が35例,HPV-11型が13例,HPV-16型1例,HPV-2型1例が検出され,HPVの型の同定できなかった例は8例であった.2)HPV-6型とHPV-11型が検出されたものは全体の84%を占め,HPV-6型とHPV-11型の比は約3:1であった.これは従来の報告の90%,3:1とほぼ同様の結果となった.3)検出されたHVP-6,11,16型それぞれの型と尖圭コンジロームの臨床型,組織像との関連はみいだせなかった.4)HPV-1型からHPV-36型までのHPV-DNAとhybridizeしないHPV-DNAが2歳女児,17歳妊婦より検出された.5)子宮頚癌よりかなりの頻度で検出されるHPV-16型が組織学的に異型のない肛門部の尖圭コンジローム男性1例より単独で検出され,16型と推定されるウイルスのcapsid antigenの局在も認められた.6)今回,我々の用いたホルマリン固定パラフィン包埋切片を材料としたin situ hybridization法は,HPVの型判定及び組織内のHPV,DNAの局在を調べるためには極めて有用な手技であり,スクリーニング検査としても適していると考えた.

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© 1988 日本皮膚科学会
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