日本皮膚科学会雑誌
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振動障害に合併した強皮症の2例
松本 義也川部 美智子安江 隆湯口 真弓吉田 一郎
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1989 年 99 巻 2 号 p. 155-

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抄録

症例1は49歳の男性で,自動車のタイヤ修理再生業に従事し,グラインダーとインパクトレンチを30年間使用後に,レイノー現象,手指のしびれ感,両上肢挙上困難が出現し,振動障害と診断された.その2年後に耳鳴と騒音性難聴,躯幹・両上肢・両大腿部に多発性斑状皮膚硬化が生じたが,皮膚硬化は約2年後に消失した.組織検査では,真皮膠原線維の増生と結節状膨化がみられた.内臓病変は認められなかった.振動障害の経過中に発症した,抗セントロメア抗体陽性の多発性斑状強皮症と診断した.症例2は53歳の男性で,25年間採石場にてジャックハンマーを使用後に,レイノー現象,手指のしびれ感,関節痛と感音性難聴が生じ振動障害と診断された.その後,強指症,両手背と足背・両前腕・両下腿・顔面のびまん性浮腫性硬化,および腹部の斑状皮膚硬化が生じた.組織学的には真皮全層にわたる膠原線維のびまん性の増生と均質化が認められた.食道下部の拡張像,抗RNP抗体陽性が認められ,振動障害に合併した全身性強皮症と診断した.自験例における振動障害が,これらの強皮症の発症と何らかの関連性があることが疑われた.

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© 1989 日本皮膚科学会
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