九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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リハビリテーションにおける脳卒中再発予防に対する取り組み
*瀧口 裕斗*石丸 智之*後藤 早弥華*野田 喜寛*相間 知子
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p. 50

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抄録

【目的】

脳卒中は再発し易く、その年間の再発率は約5%と言われている。また、10年間で約半数の患者が再発するという報告もある。再発すると一度目の発症よりも重症となることが多く、新たな後遺症が加わるので、これを防ぐことは非常に大切である。脳卒中の再発予防には健康管理や運動習慣や食生活などの生活習慣の改善が重要となることが知られているが、当院の前年度の退院時指導率は23%と非常に低かった。今回、指導率の向上を目標に看護師、薬剤師、管理栄養士と協力し、各専門分野での脳卒中再発予防に向けたパンフレットを作成し、患者、その家族へ指導を行った。

【方法】

対象は、取り組みを開始した2015年8月1日~2016年1月31日までに当院の脳神経外科、脳神経内科病棟に入院した脳卒中または脳卒中関連疾患の患者で、自宅退院が決定した89名(男性56名、女性33名)とする。平均年齢は69.1±14.5歳、疾患の内訳は脳梗塞66名、脳出血12名、くも膜下出血6名、一過性脳虚血発作5名であった。退院時のBarthel Indexの平均値は95点であった。尚、今回の取り組みについて、個人情報の保護など倫理的な配慮について全ての患者に説明を行い、同意を得た。

退院が決定した患者に対して各職種で個別に作成したパンフレットを使用し、患者本人または患者の家族に指導を行う。最後に各職種のパンフレットを1冊のファイルにまとめ、患者本人または患者の家族に手渡すこととした。介助が必要な状態で自宅退院が決定した患者、その家族に対しては併せてADL指導も実施した。今回は、指導率の比較を行うため、2014年8月1日~2015年1月31日までに自宅退院した脳卒中患者への退院時指導率を後方視的にカルテより調査した。

【結果】

2015年8月1日~2016年1月31日までに自宅退院した脳卒中患者の総数は89件であった。その内、退院時指導を実施した件数は87件であり、指導率は98%と前年度と比較して大幅に向上した。

【考察】

今回の取り組みにて、退院時指導率は大幅に向上した。また、それに伴い退院時リハビリテーション指導料の算定率も向上した。前年度の退院時指導率は低く、これはセラピストの再発予防に対する意識の低さ、他職種との連携不足が問題点として考えられた。そこで、セラピスト1人1人が再発予防指導の意識を持つこと、他職種との連携、対象者に質の保たれた指導を徹底すること目標とした。今回の取り組みは、パンフレットを作成し指導の質の均等、効率化を図るのみでなく、毎朝リハビリカンファレンスを設置し、退院時指導対象患者や指導内容の確認、セラピストの意識向上を図った。加えて、他職種とも密に連携を取り、実施状況の確認を行うことで指導漏れの防止に努めた。以上の結果、指導率を向上することが出来たと考える。

今後は、運動指導の理解度や運動の習慣化などの前後評価、再発因子の分析などが不十分であるため、運動指導の効果判定、指導内容・方法の再検討に焦点を当てて検証していきたいと考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

今回の取り組みについて、個人情報の保護など倫理的な配慮について全ての患者に説明を行い、同意を得た。

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