抄録
69歳女性,79歳女性のイロリあるいは堀ゴタツの温熱線に起因するErythema ab igne(以下EAI)を発生母地にして両下腿前面に生じた有棘細胞癌(Squamous cell carcinoma以下SCC)の2例を報告した.EAIは膝部から両下腿前面の辺縁部に認め,中心部は多形皮膚萎縮を示し,その面上に小豆大までの黒褐色角化性小結節を多数散在し,EAIの晩期病変の特徴を示していた.SCCは両下腿前面の下1/3の部位にほぼ対称性に存在し,EAI局面の中央に位置していた.小結節は組織学的に過角化と表皮細胞の異型を示し,actinic keratosisあるいはBowen病などのcarcinoma in situに類似していた.他の温熱刺激により生じるSCCと比較検討するとともに,自験2例の多発したSCCは温熱線照射の最も多い部位に存在し,EAIの晩期病変である多発性の色角化性小結節から進展したことが強く示唆され,EAIが皮膚癌の発生母地となり得ると考えた.