日本皮膚科学会雑誌
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99 巻, 6 号
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  • 川名 誠司, 西山 茂夫
    1989 年 99 巻 6 号 p. 659-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    無治療の水疱性類天疱瘡(BP)患者7例に生じた水疱の内容液中のleukotriene B4(LTB4)は平均3.80±1.99ng/mlであり,5例の熱傷水疱液(0.93±0.82ng/ml)および2例の健常人に作製したsuction blister(0.95±0.21ng/ml)と比較して有意に高値を示した.一方,LTC4はBP水疱液中に3.63±1.13ng/mlあり,健常人suction blister(0.86±0.20ng/ml)と比較して有意に高値であった.BP3例の水疱液を各々モルモット背部に皮内注射したところ,3時間後に好中球,好酸球の真皮への浸潤が認められ,6時間後にさらに広範囲に著明な浸潤が観察された.leukotrieneの測定に用いた水疱液のメタノール溶出液でも同様のchemotactic activityを認めたことより,ここで観察された好中球,好酸球浸潤は水疱液中のLTB4のchemotactic activityに基づくものと考えられた.さらに真皮上,中層の結合織間に著明な滲出傾向の増加をみた.以上の所見はBPの病変部皮膚に認められる好中球,好酸球浸潤にLTB4が関与し,著明な滲出にLTC4を含めたペプチドLTsが関与している可能性を示唆している.
  • 鮫島 俊朗, 森嶋 隆文
    1989 年 99 巻 6 号 p. 665-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    病巣中5-S-CD測定による悪性黒色腫,ことに早期病変の生化学的診断法の開発を志し,以下の興味ある結果をえた.1)melanotic melanomaの病巣中5-S-CDの平均値は原発巣では202.4ng/mg(80.6~821.4),転移巣では214.0ng/mg(96.2~520.0)で,原発巣の各病型間,原発巣と転移巣間に有意の差はなく,殆どの例が100ng/mg以上の高値を示した.2)初期病変を有するSSM例では腫瘤部中5-S-CDの平均値は171.1ng/mg(98.6~293.6),色素斑部のそれは734.5ng/mg(320.0~1666.3)であった.一方,前駆病変を有するALM例では腫瘤部の5-S-CDの平均値は166.9ng/mg(80.6~322.5)とSSMの腫瘤部のそれと有意差はないが,色素斑部のそれは1.8ng/mg(0.7~3.6)ときわめて低値であった.3)NM早期病変と鑑別を要する黒子(色素細胞母斑),dysplastic nevus,Spitz母斑,Bloch Ⅱ型黒色上皮腫や青色母斑など,SSMと,ときに鑑別が必要な色素性基底細胞上皮腫やボーエン病,ALMやLMMの早期病変との異同が問題となる単純性黒子,足底色素斑,爪甲色素線条,老人性色素斑などの病巣中5-S-CD値はmelanotic melanomaのそれに比して低値で,殆どの例が50ng/mg以下であった.4) 1)~3)の結果から,病巣中5-S-CD値が100ng/mg以上の高値を示せば,色素性腫瘍が黒色腫である可能性がきわめて大であると考えられた.また,SSM in situの病巣中5-S-CD測定による生化学的診断は可能であるが,ALM in situやlentigo malignaの診断に資することは少ない.5)amelanotic melanomaの病巣中5-S-CD値の平均値は原発巣では31.1ng/mg(30.2~32.0),転移巣では18.9ng/mg(13.6~28.7)であった.無色性腫瘍が病理組織学的に悪性像を示し,病巣中5-S-CDが色素細胞母斑のそれとほぼ同様の値を示せば,無色性腫瘤をamelanotic melanomaと診断可能と思われた.6)melanotic melanoma原発巣の病巣中cys-dopasの百分率はほぼ一定で,各病型間に有意差はなく,cys-dopasの約80%が5-S-CDであり,黒色腫の生化学的診断には5-S-CDのみを測定すれば良いことを再確認した.
  • 徳橋 和子
    1989 年 99 巻 6 号 p. 673-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    ヒト有棘細胞癌株(HSC-1)に対するetretinate並びに各種抗腫瘍剤(Bleomycin[BLM],5-fluorouracil[5-FU],Mitomycin C[MMC],Krestin[PSK])の影響を細胞動態,Mitosis index(M.I.)について検討した.更にetretinateとBLM,5-FUの混合投与でetretinateが抗腫瘍効果に及ぼす作用についても検討した.HSC-1継代培養後7日目の培養液中に各薬剤を単独投与してflow cytometryで経時的にDNA histogramを求めた.EtretinateではS期の増加とG1+0期の減少が見られた.抗腫瘍剤ではBLMはG2期,5-FUはS期,MMCはG1期に作用点があった.M.I.はetretinateで上昇,抗腫瘍剤ではPSKを除き減少した.BLM,5-FUの単独投与で細胞数は他剤の単独投与に比べ目だって少なかった.またetretinateとBLM,5-FU,を混合投与するとBLM,5-FUの2種混合よりetretinateを加えた3種混合の方が細胞数の減少は著明であった.このことより,etretinateはG1+0期の細胞をS期に動員することにより,増殖相の細胞を増やして抗腫瘍剤の作用を高める働きをもつと考えた.
  • 石地 尚興
    1989 年 99 巻 6 号 p. 683-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    疣贅状表皮発育異常症(epidermodysplasia verruciformis以下EVと略す)患者の癜風様皮疹より粗く分離したヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus以下HPVと略す)で家兎を免疫し,抗体を作成した.この抗体(以下抗EV抗体と略す)を用いてEV患者の癜風様皮疹,皮膚悪性腫瘍,またEV以外のウイルス性疣贅,HPV感染と無関係と考えられる皮膚腫瘍について酵素抗体法,immunoblot法による検索を行った.EV以外のウイルス性疣贅の酵素抗体法でDako社B580抗体と同様の陽性所見が得られたこと,immunoblot法でHPVの被殻蛋白と考えられる分子量約58Kdの蛋白に陽性所見が得られたことにより,この抗体はDako社B580抗体と同様にpapillomavirus genus specific antigen(以下Pgs抗原と略す)を認識すると考えられた.しかし,EVにおける癜風様皮疹についての酵素抗体法では,Dako社B580抗体では陽性所見が得られないウイルス粒子の存在しない基底細胞の核や細胞質の一部,有棘細胞の細胞質や核の一部に陽性所見が得られ,また,同様にウイルス粒子の存在しない皮膚悪性腫瘍の腹腔内転移巣においても細胞質および核の一部に陽性所見が得られた.また,immunoblot法でも癜風様皮疹および皮膚悪性腫瘍においてDako社B580抗体では陽性所見が得られない分子量約42Kd,33Kdの蛋白に陽性所見が得られた.このことは,この抗EV抗体がPgs抗原以外に,EVに特異的なHPV関連組織抗原をも認識することを示している.そこでHPV型の異なるEV患者12例の癜風様皮疹あるいは悪性腫瘍について酵素抗体法を行い,このHPV関連組織抗原の局在を調べた.その結果,この抗原は感染しているHPVの型に関係なくEV患者12例すべてに発現しており,しかも典型的なEVの癜風様皮疹以外に,ウイルス粒子の産生のない老人性色素斑様の皮疹や,悪性腫瘍の転移巣にも発現していたが,EV以外のHPV感染症では発現していなかった.この抗原がEVにおける発癌にはたす役割は不明であるが,EVの発癌機構におけるHPVの関与を裏付けるものと考えた.また,この抗EV抗体はEVを特異的に認識し,しかもウイルス粒子産生のない皮疹まで広汎に検出しうるため,EVのマーカーとしても有用と考えられた.
  • 手塚 匡哉, 伊藤 薫, 伊藤 雅章, 佐藤 良夫
    1989 年 99 巻 6 号 p. 697-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    carcinoembryonic antigen(CEA)に対するポリクローナル抗体(PoAb)と,CEA関連抗原と交叉反応の少ない数種の抗CEAモノクローナル抗体(MoAb)を用いて,正常皮膚ならびに汗器官系腫瘍,乳房外Paget病,その他の皮膚上皮系腫瘍,ヒト大腸粘膜上皮およびヒト大腸癌におけるCEAの局在を免疫組織学的に検討した.その結果,ヒト大腸癌を除き,MoAbを用いた場合,PoAb陽性部が弱陽性または陰性となることが見いだされた.さらに,MoAbの組織反応パターンは,特異性の異なる各抗体間で相異があり,抗CEA-PoAb陽性反応には,種々のCEA関連抗原との交叉反応が含まれる可能性が考えられた.したがって,皮膚における抗CEA-PoAb抗体陽性物質は,大腸癌に見い出された本来のCEAではなく,CEA関連抗原であると考えられる.
  • 中村 聡
    1989 年 99 巻 6 号 p. 709-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    母斑細胞母斑64例(複合母斑12例および真皮内母斑52例)における数種の抗原性物質の発現を免疫組織化学的に検索した.S-100蛋白とそのα鎖・β鎖に対する陽性反応はA・B・C型細胞のいずれにおいても高率に認められたが,どの細胞型においてもα鎖の陽性率はβ鎖のそれよりやや低かった.それらの染色の強さはA型,B型,C型細胞の順に漸進的に強くなる傾向が認められた.Neuron specific enolase陽性反応はどの型の母斑細胞においても比較的高率に認められたが,その陽性率および染色の強さはともにA型,B型,C型細胞の順に低下した.β2-microglobulin陽性反応はまれに少数のA型細胞においてのみ観察された.Vimentin陽性反応はどの型の母斑細胞においても高率に認められた.Myelin basic proteinおよびglial fibrillary acidic protein陽性細胞は認められなかった.他方,表皮メラノサイトはvimentinのみ時に陽性,Schwann細胞はS-100蛋白とそのβ鎖のみ陽性であった.母斑細胞はS-100蛋白とそのサブユニット,β2MおよびNSEの発現に関して神経堤起源性細胞である表皮メラノサイトならびにSchwann細胞と共通の性状を保有するが,発現の様相はこれら2種類の細胞とそれに由来する良性・悪性腫瘍の場合と比べて独特であり,それを母斑細胞における発生異常の表現と考えた.
  • 片山 一朗, 西岡 清, 西山 茂夫
    1989 年 99 巻 6 号 p. 717-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    当院皮膚科を受診したdefinite Sjogren's syndrome(以下SjSと略す)65名につき皮膚科サイドより見たSjSの臨床的特徴を検討した.内分けはprimary SjS27名secondary SjS38名であり,男子4名,女子61名であった.平均年齢39.1歳でありprimary SjSでは40代以降にピークが見られた.乾燥症状は65名中49名(75%)に認められた.皮膚科初診時の主訴としては環状紅斑が最も多くついで,凍瘡様皮疹,レイノー現象,紫斑,0・舶s定型紅斑が比較的多く見られた.経過中薬疹,無脂性皮膚炎も比較的多く見られた.また環状紅斑,凍瘡様皮疹,薬疹,紫斑,顔面色素斑,結節性紅斑等の皮疹はprimary SjSに多く見られた.臨床検査上,抗SS-A,抗SS-B抗体の他,RA因子,Speckled型の抗核抗体,高IgG血症が見られたが,primary SjS,secondary SjSの間で特に有意差を認めなかった.
  • 薄場 泰子, 相場 節也, 橋本 久美子, 谷田 泰男, 酒井 邦雄
    1989 年 99 巻 6 号 p. 725-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    52歳,女性.尋常性天疱瘡が副腎皮質ホルモン剤に抵抗するため免疫抑制剤と金製剤を併用し,金製剤の総量110mgを投与したところで間質性肺炎を発症して死亡した.自験例のように,天疱瘡患者において金製剤使用中,間質性肺炎が発症した例は,本邦で8例である.今回,私たちはこの8例についての検討に基づき,金製剤は比較的容易に用いられてはいるが,その適応の十分な再検討と使用に際しても慎重な経過観察の必要があると結論した.
  • 清島 真理子, 森 俊二, 清島 満, 野間 昭夫
    1989 年 99 巻 6 号 p. 731-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    5例の尋常性乾癬患者にエトレチネートを体重kg当たり1mg/日投与し,投与前と投与開始28日後の血清脂質,HDLコレステロール,アポリポ蛋白(A-Ⅰ,A-Ⅱ,B,C-Ⅱ,C-Ⅲ,E),レシチン:コレステロール アシルトランスフェラーゼ(LCAT),リポ蛋白リパーゼ(LPL)活性を測定した.4例ではエトレチネート投与前後ともこれらの値は正常範囲内であったが,1例でLPL活性が投与後著明に低下し,内服中止により正常化し,再投与により再び低下を示した.この症例ではLCATはエトレチネート投与後2ヵ月半までごく軽度の増加を示したが,血清脂質,HDL-C,アポリポ蛋白は投与前後とも正常域内であった.エトレチネート投与中にLPL活性の著明な低下がみられた症例について若干の検討を行った.
  • 赤坂 俊英, 昆 宰市
    1989 年 99 巻 6 号 p. 735-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    69歳女性,79歳女性のイロリあるいは堀ゴタツの温熱線に起因するErythema ab igne(以下EAI)を発生母地にして両下腿前面に生じた有棘細胞癌(Squamous cell carcinoma以下SCC)の2例を報告した.EAIは膝部から両下腿前面の辺縁部に認め,中心部は多形皮膚萎縮を示し,その面上に小豆大までの黒褐色角化性小結節を多数散在し,EAIの晩期病変の特徴を示していた.SCCは両下腿前面の下1/3の部位にほぼ対称性に存在し,EAI局面の中央に位置していた.小結節は組織学的に過角化と表皮細胞の異型を示し,actinic keratosisあるいはBowen病などのcarcinoma in situに類似していた.他の温熱刺激により生じるSCCと比較検討するとともに,自験2例の多発したSCCは温熱線照射の最も多い部位に存在し,EAIの晩期病変である多発性の色角化性小結節から進展したことが強く示唆され,EAIが皮膚癌の発生母地となり得ると考えた.
  • 今井 龍介, 三浦 淳子, 高森 建二
    1989 年 99 巻 6 号 p. 743-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    脱毛の進行する円形脱毛症(単発性~多発性)患者の脱毛巣の数と末梢血中のactivated T細胞(HLA-DR+T細胞)サブセットおよびnatural killer(NK)細胞サブセットの占有率との関連を検討した.脱毛巣が3個以下の軽症型では,正常人コントロールとの間に有意差を認めなかった.一方,脱毛巣が10個以上の重症型では,activated T細胞(activated helper/inducer T細胞とactivated cytotoxic/suppressor T細胞)とキラー活性の高いNK細胞(Leu7+Leu11+細胞とLeu7-Leu11+細胞)の占有率の有意な増加が認められ,円形脱毛症の病勢とactivated T細胞およびNK細胞サブセット占有率との間に正の相関関係が認められた.以上の結果は,activated T細胞およびNK細胞サブセット占有率が円形脱毛症の病勢を示す1つのマーカーとなり得る可能性を示唆していると思われた.
  • 1989 年 99 巻 6 号 p. 747-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
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