2011 年 32 巻 p. 28-35
本研究では,高気圧酸素療法によるヒト生体におけるアキレス腱の血液量(THb)および酸素飽和度(StO2)に対する急性および慢性の影響を検証することを目的とした.赤色分光装置を用いて,高気圧酸素療法による腱の血液循環(THbおよびStO2)における急性の変化として,気圧および吸引する酸素濃度を変えた3条件(1.3気圧+50%酸素条件,1.3気圧+常酸素条件,常気圧+50%酸素条件)を比較し(実験1),60分間の療法後1~72時間後までの回復過程の変化(実験2)を測定した.さらに,週2回の頻度で8週間の高気圧酸素療法を施し,腱の血液循環に対する慢性の影響についても検証を加えた(実験3).実験1では,療法終了時(60分)における安静時に対するTHbおよびStO2の変化率は,3条件間で有意な差は認められなかった.実験2では,高気圧酸素療法終了1時間後および2時間後までは,THbおよびStO2は安静時よりも高い値を維持していたが,3時間後には安静時レベルまで戻った.実験3では,安静時におけるTHbおよびStO2が,開始時に比べて6および8週目で有意に低かった.以上の結果,高気圧酸素療法による腱内の血液量および酸素飽和度の増加には気圧および吸入する酸素濃度の両方が影響していること,そして3時間後にはその効果が消失し,8週間にわたって療法を継続すると安静時の血液量および酸素飽和度が減少することが明らかになった.