2012 年 33 巻 p. 23-32
持久性競技アスリート選手は,起立耐性が低下することが報告されている.一方,脳循環調節機能が起立耐性を決定する生理因子と考えられるが,持久性トレーニングが脳循環調節機能に与える影響については明らかにされていない.そこで本研究では,脳自己調節機能が持久性トレーニングにより低下すると仮説を立て,持久性アスリートと非アスリートとの比較実験によりこの仮説を検証した.定期的に運動を行っていない(週2日以下)体力レベルが中等度(AF; 最大酸素摂取量40 ml/min/kg)の健常男性8名(非鍛錬群)及び2年以上,週5〜6日の持久運動トレーニングを行っているアスリート(HF; 64ml/min/kg以上)男性8名(鍛錬群)を対象に実験を行った.動的な脳自己調節機能の同定は,先行研究と同様の方法を用いた.被検者は,座位姿勢において,カフ止血リリース法による動脈血圧低下時の中大脳動脈血流速度(経頭蓋ドップラー計測装置;TCD法)の反応から脳自己調節機能の指標であるRoR(rate of regulation)を算出評価した.RoRは,両群間で有意な差は観察されなかった(AF, 0.096±0.107/s; HF, 0.088±0.075/s: P=0.878).この結果は,我々の仮説とは異なり,動的な脳循環調節機能が,持久性トレーニングによる起立耐性の低下に関与する可能性が低いことを示唆した.