これまでの先行研究において,T47クラスのパラリンピックスプリンター(PS)が義手を用いることのメリットやデメリットは明らかとなっておらず,義手を用いるべきか否かはアスリートやコーチにとっての疑問である.そこで本研究の目的は,PSにおける義手の着用の有無と健常スプリンター(ABS)における片腕振りの制限がスプリント走におけるパフォーマンスと運動学変数に及ぼす影響をそれぞれ明らかにすることとした.2名のPSは義手の着用条件と非着用条件,8名のABSは通常の腕振り条件と右腕固定条件で,屋内の40m走路での全力疾走を行った.その結果,PSにおける義手の着用と非着用条件間では走速度がほぼ変わらず,胸郭および骨盤の回旋動作に違いがみられた.また,ABSにおいては,右腕の腕振りを制限すると,通常の腕振り条件と比較して,走速度が有意に低下し,時空間変数,胸郭と骨盤および下肢関節動作が変化した.このことから,スプリント走における腕振り動作の重要性が示唆され,義手の着用は走動作における体幹部の回旋運動のバランスを取ることに効果がある可能性が示唆された.