胃腸の電気活動を低拘束・簡便に測定できるひとつの方法として経皮的胃電図がある.胃電図検査は消化管運動や自律神経活動を評価する非侵襲な方法として知られている.しかし,胃電図の記録は呼吸に伴う横隔膜や心筋による電気活動の影響を受けやすく,また胃の運動機能との関連性や得られたデータの解析法が確立されていなかったことから,心電図や脳波のように広く臨床応用されるに至らなかった.そこで,本論文では,胃電図の基本的な生体応答の確認として,異なる2種類の運動強度を用いて運動負荷後の胃の電気活動の影響について検討した.その結果,運動負荷後では運動強度に関わらず,胃の正常周波数帯域(2.4-3.7cpm)でのスペクトル密度は減少した.これは,運動負荷による胃の活動低下を示している可能性がある.また,運動強度が高い負荷後では並進誤差の値が有意に増加した.運動強度の違いは,胃腸だけでなく他臓器から発せられる電気活動にも影響を及ぼしていると考えられる.