デサントスポーツ科学
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研究論文
マスターズスイマーにおける肩関節周囲筋の損傷や石灰沈着が生じる身体的・動作的特徴の解明とその予防に向けた取り組み
地神 裕史大内 洋金岡 恒治加藤 知生河野 隆次
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2018 年 39 巻 p. 249-256

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抄録

本研究は,マスターズスイマーを対象に,超音波画像診断機器や徒手検査,水泳暦や泳法などの質問項目から,上腕二頭筋や肩甲下筋の水腫や石灰などの有症率を明らかにし,これらが生じる要因について検討を行った.超音波画像診断機器を用いた評価から,マスターズスイマーは先行研究で報告されているよりもかなり多くの肩周囲の異常所見が見つかった.これは痛みを有している症候肩ではもちろんだが,痛みを有していない無症候肩においても高い値を示した.一方,これらの異常所見と,その所見を有している筋への疼痛誘発テストには,統計学的な有意な関係は認められなかった. これらの結果より,水泳は肩の内旋や屈曲などの動作が繰り返されるため,水泳を行っていない中高齢者よりもメカニカルストレスが生じやすく,水腫や石灰が生じやすいことが示唆された.しかし,これらの所見が必ずしも痛みに直結しているわけではないため,今後も更なる研究が必要である. 緒言 超音波画像診断機器開発の進歩は著しく,以前よりも鮮明に身体内部の異常所見を撮像することが可能である.また,機器の進歩に加えて診断技術や診断方法の一般化も進み,精度も向上している.超音波画像診断機器は他の画像診断機器よりも可搬性があり,身体への害も最小限であるため,様々な現場で使用されている1-3).スポーツ現場や学校検診においてもこれらの機器を用いた検診が盛んに行われるようになった.中でも小学生の野球選手を対象とした野球肘の検診は,障害の早期発見,早期治療に結びついている. 一方,水泳選手はインピンジメントを主とした肩の障害が多く発生することが広く知られており,水泳特有の肩の障害を水泳肩と呼んでいる.水泳選手を対象とした障害の調査は多数されており,先行研究ではトップレベルの水泳選手,水泳愛好家であるマスターズスイマーともに障害の好発部位は腰部,肩が多いことが報告されている4, 5).中でも水泳は中高年に特有の四十肩,五十肩と呼ばれる肩関節周囲炎の予防,改善のために勧められることも少なくないが,安易に始めることで更なる障害を誘発してしまう危険も潜んでいる. このように中高年者の水泳は肩にとって良い運動なのかどうか,現在では明確な答えが得られていない.よって,可搬性もあり,非侵襲的な超音波画像診断機器を用いてマスターズスイマーの肩関節周囲の異常所見の有症率を明らかにすることで,水泳が肩にとってどのような影響を与えるのか検討する必要がある.また,肩関節の機能評価や質問用紙にて水泳暦や練習距離や頻度,泳法などの項目と異常所見との関係を明らかにすることを目的に本研究を行った.

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