本研究では,筋損傷後のアイシング処置がミトコンドリアや痛み因子,線維化へ及ぼす影響を明らかにするとともに,アイシングの負の側面を相殺し得る介入法についてラットを対象に検討した.筋損傷後の単回のアイシング処置は,損傷28日後の線維化面積を増加させ,VDAC1タンパク質発現量を低下させた.痛み関連因子(BKB2RとmPGES-1)の損傷1日後のmRNA発現量は,アイシング処置によって減少した.一方,アイシング処置後に間欠的な温熱刺激を併用すると,特に損傷1日後から併用した条件で線維化が無処置と同程度まで軽減された.以上の結果から,筋損傷後のアイシング処置は単回であっても受傷後早期の筋痛を軽減できるが,その後の再生過程で筋の線維化を促進するだけでなく,ミトコンドリア量の回復も妨げることが示唆された.また,アイシング処置の線維化亢進作用は,アイシング後1日以内から温熱療法を併用することで相殺できることが示された.