2024 年 45 巻 p. 117-125
筋痛は高強度の運動後に生じる筋の主観的な痛みであり,スポーツ現場では運動再開の指標として筋痛が用いられケースが多い.しかし,方法論上の限界から,筋痛が筋の構造的損傷を反映しているのかは明らかになっていなかった.そこで本研究は,磁気共鳴画像法 (拡散テンソル画像) を用いることで,走運動後の筋損傷と筋痛の変化を明らかにし,筋痛が筋損傷の回復指標となるのかを検討することを目的とした.レクリエーションランナー16名を対象に20-km走レース前後の主観的な遅発性筋痛 (DOMS),下肢12筋それぞれのT2緩和時間,拡散パラメータを測定した.その結果,レース1-2日後に下肢筋群でDOMS とT2緩和時間が最大となり,その後,レース3-4日後には回復した.一方で,大腿筋の一部の平均拡散性 (MD) はレース3-4日後まで増加傾向を示した.以上のことから,20-km走後に,筋痛が回復していても,筋損傷・炎症反応による筋の構造変化が残っている可能性があり,筋痛を運動の再開指標にするのは適切でないと考える.