デサントスポーツ科学
Online ISSN : 2758-4429
Print ISSN : 0285-5739
研究論文
過去の運動習慣が将来のうつ・不安を予防する メカニズムの解明
冨賀 裕貴檜垣 靖樹高橋 宏和
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2024 年 45 巻 p. 134-141

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抄録

定期的な運動がうつ・不安の改善に効果的であることはよく知られている.しかしながら,その効果の持続期間や,将来のうつ・不安を予防するのかについては不明な点が多い.本研究では,動物を対象に4週間の運動トレーニングを実施させ,運動停止期間後の気分行動を定量した.さらに,その海馬内分子メカニズムとして脳由来神経栄養因子 (Brain-derived neurotrophic factor: BDNF) のエピジェネティックな変化に着目した検討を行った.気分行動の評価は,不安様行動の計測によく用いられる高架式十字迷路試験およびオープンフィールド試験を用いた.高架式十字迷路試験の結果,抗不安様行動の指標の一つであるオープンアームでの移動距離は,運動トレーニング停止2週間後においても高値を示していた.一方で,運動トレーニング停止4週間後ではオープンアームでの移動距離が,コントロール群に比べ有意に減少していた.オープンフィールド試験における中心エリアへの侵入回数は,運動トレーニング停止2および4週間後において群間差は認められなかった.BdnfのmRNAレベル,エピジェネティクスの一つであるDNAメチル化レベルは変化していなかった.本研究結果から,運動による抗不安効果は短期的には維持される一方で,離脱期間が長期にわたるとむしろ不安が増加することが明らかとなった.またその分子背景には,今回解析した領域における海馬Bdnfのエピジェネティックな制御機構は関与していない可能性が示唆された.

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