主催: 日本地球化学会年会要旨集
会議名: 2023年度日本地球化学会第70回年会講演要旨集
回次: 70
開催日: 2023/09/14 - 2023/09/24
p. 171-
環太平洋地域に産するかんらん岩体の中には、高度にメルト成分に枯渇したものが見られ、その枯渇の程度は太古代クラトンの下部マントルと同程度である。このようなかんらん岩体の一つである岩内岳の溶融条件や年代を制約すべく、本発表では強親鉄性元素およびOs同位体比組成を報告する。測定の結果、Os-Ir濃度がPUMの値を下回るかんらん岩試料が存在する事がわかった。さらにハルツバージャイトにはPUMに対してフラットなHSEパターンを示すものがあった。本研究のOs-Irが枯渇するパターンは、他の沈み込み帯に関連したマントルでも報告されており、前弧域における火成活動との関連性が指摘されている。このことを踏まえ、Os-Irの枯渇から示唆される沈み込み帯前弧域での火成活動が、岩内岳かんらん岩の高度な枯渇の原因であると推測する。さらに、岩内岳には海洋底かんらん岩と類似のHSEパターンを持つ試料が存在するが、HSEパターンによってこれらの試料を前弧域での二次的な溶融を受けたかんらん岩から区別できる可能性がある。