抄録
近年、従来の主流eスポーツと異なるスマホゲームなどの後発eスポーツ市場が形成されてきた。しかしそれらが“本当のeスポーツ”と見なされない現象も生じ始めた。eスポーツという概念定義と“本当のeスポーツ”という社会的概念との間に隔たりが存在するのである。本研究は、欧米においてeスポーツとの関係が「常識外れ」と評価された任天堂ゲームを取り上げ、ストリーミングメディア上の任天堂世界大会に対するコメントを「バーチャル世界エスノグラフィー」の方法論に依拠して分析した。ゲームをめぐるジェンダー研究、スポーツ化研究などを参照しながら質的分析を行った結果、聴衆の中でマチズモ、アスレティシズム、エンジョイメントの三つの価値観が併存しながら、eスポーツに対して異なる基準により価値判断を下す様相が露わになった。聴衆がマチズモとアスレティシズムに基づきeスポーツの資格を厳しく制限し、自ら認定した“カジュアルさ”を拒絶する中にあって、エンジョイメントは参入障壁を取り払ってコミュニティの裾野を広げ、eスポーツの発展と社会的な定着に寄与する可能性がある。