抄録
【目的】当院回復期リハ病棟の言語聴覚士に対し、退院先を左右する一要因として経口摂取の可否が挙げられる事から、他職種より経管栄養患者の予後予測を求められる事が多い。本研究の目的は経口摂取可否に関連のある因子を入院時の情報から検討する事とした。【方法】対象者は2017/1/1-12/31までに回復期リハ病棟へ入退院し、入院時に経管栄養の38例の内、VFを実施した13名とした。調査項目は入院からVFまでの期間、年齢、入院時JCS、MMSE、改訂水飲みテスト(MWST)、反復唾液飲みテスト(RSST)、摂食・嚥下能力のグレード(藤島Gr)、FIM、The Mann Assessment of Swallowing Ability(MASA)とした。FIMは運動項目と認知項目に分けて集計した。統計解析はFIM食事とその他の調査項目との関連性及び寄与をPearsonの積率相関係数、重回帰分析を用いて検討した。【結果】退院時に経口摂取が可能であった患者は6名であった。FIM食事と有意な相関関係が認められた項目は、藤島Gr(平均値=経口移行群:5.4、経管栄養群:3.1、rs=0.81、P<0.05)であり、重回帰分析でも藤島Grが抽出された。【考察】藤島Grに相関が認められた事は、入院時の嚥下状態が退院時の経口移行可否に関連している事を表しており、経口摂取群でGr.5.4であったことから、おおよそ一部の経口摂取が可能な程度の能力を有していることが経口移行には重要と考える。しかし、入院時の能力が低くても経口移行できた対象者も複数名おり、このような対象者を抽出するためには、入院時のみならず時期経過を考慮した追跡調査が必要であり、今後の課題と考える。