道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
心窩部痛や貧血を契機に診断された好酸球性胃腸炎の5例
渡辺 亮介間部 克裕米谷 則重松田 宗一郎津田 桃子久保 公利加藤 元嗣八木田 一雄
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2020 年 3 巻 1 号 p. 40-44

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抄録

【症例】10代男性 【主訴】心窩部痛、嘔気、体重減少 【現病歴】3週間持続する心窩部痛、嘔気、体重減少を主訴に前医受診。軽度の鉄欠乏性貧血と上部内視鏡検査で十二指腸球部に2箇所の潰瘍を認めた。H.pylori便中抗原および血清抗体は陰性で原因は不明、各種PPI治療で潰瘍が改善しなかったことから、当院紹介となった。【既往歴】アレルギー性鼻炎 【家族歴】父親:H.pylori胃炎、十二指腸潰瘍、母親:小児喘息 【経過】H.pyloriはUBT、RUT、便中抗原、血清・尿中抗体いずれも陰性で、生検においてもH.pylori (-)、H.heilmannii (-)であった。生検でCMV陰性、NSAIDs服用はなく、画像検査及び生検結果からクローン病を示唆する所見なし、CT、US、MRIでZollinger-Ellison症候群を示唆する腫瘍病変を認めなかった。胃、十二指腸、回腸、大腸の生検結果から好酸球性十二指腸潰瘍と診断されプレドニゾロン治療を検討したが、若年者に対しては様々な副作用も懸念されることから、本人・両親の希望の下で、より高い安全性が期待されるクローン病治療薬ブデソニド製剤をDDSを考慮し粉砕した剤型で投与開始した。治療開始後速やかに症状消失し十二指腸潰瘍の治癒傾向を認め退院。8ヶ月後には潰瘍は完全に瘢痕化し、経過中高値を示した末梢血中の好酸球数も正常レベルまで低下を認めた。 【結語】今回の症例において、回腸から上行結腸で徐放するよう設計されたブデソニド製剤を粉砕して投与することで、明らかな副作用なしに好酸球性十二指腸潰瘍の改善効果が認められた。更なる検討が必要であるが、好酸球性胃腸炎や好酸球性食道炎に対し本治療が有効である可能性が示唆された。

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