道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
重症型アルコール性肝炎に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を併発した1例
久保 公利早坂 秀平田中 一光大北 一郎
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2023 年 6 巻 1 号 p. 62-66

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抄録

【症例】45歳、女性【主訴】黄疸【現病歴】2022年2月初旬、1週間前からの黄疸を主訴に近医を受診した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)「第6波」の渦中にあり、各病院でクラスター(感染者集団)が発生していた。入院加療を必要とする急性肝障害と考えられたが、受け入れ先が見つからずDr to Drによる依頼により当科を紹介受診した。【既往歴】なし【生活歴】飲酒:焼酎600ml/日、喫煙:20~42歳 5本/日、アレルギー(-)【新型コロナワクチン接種歴】2回【入院時血液検査所見】著明な白血球増加(WBC 12,000/μl)、PT延長(PT 24.8%、PT-INR 2.0)、(直接型優位のビリルビン増加(T-Bil 16.6mg/dl、D-Bil 10.9mg/dl)、AST優位な トランスアミナーゼの上昇(AST 167U/l、ALT 41U/l)を認めた。血清学的検査でHBs抗原、HCV抗体、抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体はすべて陰性であった。【画像所見】腹部造影CTで肝臓は著明に腫大し、実質は低吸収域を呈しており、周囲には腹水の貯留が認められた。【経過】全身性炎症反応症候群と播種性血管内凝固症候群を伴った重症型アルコール性肝炎と診断し、ステロイドパルス療法と抗凝固療法による集学的治療を開始した。入院第13病日に抗原定量検査によりCOVID-19陽性(軽症)と診断し、中和抗体薬(ソトロビマブ)による治療を行った。ステロイドは漸減中止し全身状態の安定と血液検査所見の改善(WBC 8,500/μl、T-Bil 3.8mg/dl、PT 41.6%)を認めたために第48病日に退院となった。全経過を通じて肝性脳症は認めず、腎機能障害や消化管出血も認めなかった。退院後は再飲酒することなく外来を通院している。【結語】重症型アルコール性肝炎にCOVID-19を併発した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

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