抄録
【はじめに】当院では人工関節置換術(以下TKA)を受けた患者は膝の関節可動域を拡大目的に術後2~3日後から持続的他動運動(以下CPM)を実施している。TKA患者のCPM実施に伴う疼痛コントロールに対し、音楽療法導入の有効性を示す報告は、われわれが渉猟しえた範囲では報告は認められなかった。そこで術後のCPM実施中に音楽を聴くことで疼痛が緩和され、関節可動域を拡大することができるか調査した。【対象・方法】対象は2021年12月から2022年6月までに研究に同意をし、TKAを受けた29例で、音楽あり群14例、音楽なし群15例の2群に無作為に分類した。CPMは1日1時間半実施。音楽はヘッドフォンで音楽CDを鑑賞とした。CPM開始後、4日間のVAS,関節可動域を調査した。統計検定にはマンホイットニーU検定を用いた。【結果】術後疼痛のVASの平均値は、術後4日目、5日目、7日目の値は音楽あり群が50.1→56.9→52.3、なし群が62.4→58.9→53.7であり全期間で2群間に統計学的有意差は認められなかった。関節可動域も、音楽あり群が92.2°→101.9°、音楽なし群が86.7°→96.9°であり、全期間で2群間に統計学的有意差は認められなかった。【考察】疼痛とは組織損傷が実際に起こった時、あるいは起こりそうな時に付随する不快な感覚および情動体験、あるいはそれに似た不快な感覚および情動体験と定義されている。本研究ではTKAの術直後に音楽療法を併用しても、疼痛・関節可動域拡大にその効果は認められなかった。組織損傷に伴う疼痛などの身体的ストレスには鎮痛剤などの投薬、手術環境に対する精神的ストレスには音楽療法などによるリラックス効果が有効であると言われているがTKAの手術直後は組織損傷による身体ストレスが精神的ストレスよりも大きかったことにより音楽療法にも限界があると考えられた。