道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
診断に難渋したサイトメガロウイルス胃腸炎の1例
張 辛寒田中 一光久保 公利木村 伯子
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2024 年 7 巻 1 号 p. 73-76

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抄録
【症例】80歳代、女性【主訴】腹痛、下痢【現病歴】施設入所中、3日前からの腹痛と下痢を主訴に前医を受診した。絶食、点滴による保存的加療を行ったが、症状の改善を認めず精査加療目的に当院紹介入院となった。【既往歴】アルツハイマー型認知症、高血圧【入院時現症】BT:38℃。腹部:平坦・軟、下腹部に軽度圧痛を認める。【入院後経過】入院同日の胸腹部CT検査で直腸からS状結腸の腸管壁肥厚および周囲脂肪織濃度の上昇が見られたため、細菌性腸炎を疑い抗生剤治療を開始した。第6病日に大量の黒色便が出現し、上部消化管内視鏡検査(EGD)を施行したところ胃体中部後壁に10cm大の潰瘍が見られた。酸分泌抑制薬による治療を開始し、以降黒色便の消失を認めた。解熱傾向が見られたため第8病日より抗生剤治療を終了したが、その後も37℃台の微熱を繰り返した。尿路感染症や中心静脈カテーテル感染症を疑い、抗生剤を変更して治療を行ったが微熱の改善は見られなかった。第30病日に胸腹部CT検査を再検したところ直腸からS状結腸の腸管壁肥厚は改善したが、周囲脂肪織濃度の上昇は著変がなかった。血液検査でサイトメガロウイルス(CMV)抗原は陰性であったが、CMV胃腸炎を否定できないため、第35病日にEGD再検および下部消化管内視鏡検査(CS)を実施した。EGDで胃潰瘍瘢痕を、CSで直腸からS状結腸に地図状潰瘍を認め、それぞれ生検を施行したところCMV陽性細胞が見られ、CMV胃腸炎と診断した。第41病日よりガンシクロビルによる治療を開始したところ、解熱が得られ腹部症状の改善も認められた。【考察】CMV胃腸炎は免疫低下状態で発症することが多く、抗原検査の陽性率は30%~50%と低いため、臨床所見から本症を疑う場合には生検による組織検査を追加すべきである。今回、診断に難渋したCMV胃腸炎の1例を経験したため、文献的考察を加えて報告する。
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