道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
尿路感染症を契機に高アンモニア血症をきたした1例
釼持 要張 辛寒田中 一光久保 公利
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2024 年 7 巻 1 号 p. 77-80

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抄録
【症例】80歳代、女性【主訴】意識障害、血尿【既往歴】心不全、肝疾患の既往はない。【現病歴】38℃の発熱と血尿が出現し、1週間後に意識障害を呈したため救急搬送された。来院時、JCSⅢ-200と高度意識障害が認められた。血液検査で炎症反応上昇(白血球数10,000/μL、CRP12.73mg/dL)を認め、肝機能は正常値(総ビリルビン0.80mg/dL、AST 9U/L、ALT 5U/L)であったが、高アンモニア血症(NH3 458μg/L)が認められた。尿検査では肉眼的に赤褐色、混濁、PH7.0、赤血球100/HPF、白血球100/HPF、細菌3+で尿路感染を疑う所見だった。また脳CT/MRIでは明らかな異常所見を認めなかった。胸腹部CTでは両側水腎症の所見が認められた。以上から尿路感染を契機に高アンモニア血症を呈したと考えられた。尿路感染症および水腎症治療目的に尿道カテーテル管理下に抗生剤治療を開始した。また肝性脳症改善目的にアミノ酸点滴を開始した。入院8日目にNH3 58μg/Lまで低下し、意識状態も改善した。その後尿培養でEnterococcus faecalisおよびBacteroides fragilisが検出された。【考察】肝疾患を伴わない高アンモニア血症の原因の多くはウレアーゼ産生菌による閉塞性尿路感染が原因となる場合がある。本症例では、典型的なウレアーゼ産生菌は検出されなかったが、ウレアーゼ産生菌の関与がなくても尿閉により膀胱内圧が上昇し、尿中アンモニアが膀胱静脈叢に吸収されることで、高アンモニア血症を引き起こす可能性が報告されている。高アンモニア血症を伴った閉塞性尿路感染の症例では、抗菌薬治療と共に尿閉の解除が有効である。
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