抄録
症例は50歳代、女性。X年7月胸のつかえ感を主訴に近医を受診し、上部消化管内視鏡検査(EGD)で食道胃接合部から胃噴門部にかけて2型病変を認め、当科紹介となった。当科での病理は未分化癌、HER2陰性であった。CTでは腹部リンパ節、多発肝転移の所見を認め、切除不能胃癌に準じFOLFOX+Nivolumab(Nivo)療法を開始した。4サイクル後に肝転移増大を認め、PTX+Rmab療法を開始、一時原発巣と肝転移縮小を認めたが、再度肝転移増大を認めたため、4サイクルで終了し、Irinotecanへ変更した。EGDを再検したところ、原発巣は著明な縮小を認めたが、原発巣からの生検病理では、メラニンを有する主要細胞が密に増殖しており、免疫染色はHMB-45、S-100陽性、食道原発悪性黒色腫の診断となった。肝腫瘍生検でも同様の所見が得られた。BRAF変異陰性、MSI陰性、PD-L1発現率1%以上であった。食道原発悪性黒色腫として、X+1年3月Nivo+Ipilinumab(IPI)療法を開始した。1サイクル目day7に腹部膨満感、倦怠感を認め、黄疸(T-Bil 5.7)と肝機能障害(AST/ALT 97/70)を認め、入院となった。免疫関連有害事象(irAE)肝障害としてmPSL100mg開始したが、黄疸ならびに全身状態は悪化し、第11病日(Nivo+IPI1サイクル目day18)に死亡退院された。食道原発悪性黒色腫は、食道悪性腫瘍の0.1〜0.2%を占める稀な疾患である。食道原発悪性黒色腫は、黒色や褐色の隆起を呈するものが多いが、メラニンが組織学的に少ない場合診断は困難であるとされている。切除不能症例における治療法は定まっておらず、皮膚悪性黒色腫の治療に準じた治療が行われている。今回診断に難渋し、急激な経過を辿った食道悪性黒色腫の1例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。