抄録
セルトリ様類内膜癌 (sertoliform endometrioid carcinoma)は、卵巣における性索間葉系腫瘍のセルトリ細胞腫と似た形態を示すが、セルトリ細胞腫と異なり予後不良であることから鑑別が問題となる類内膜癌の組織亜型であり、卵巣癌ではじめて報告された。その後同様の組織型の腫瘍が子宮内膜癌にも存在することが報告され、世界的にも10例に満たない報告があるにすぎないごくまれな腫瘍である。今回われわれは、前医で切除生検後、子宮内膜に腫瘍が認められなかったが、手術材料にて診断できたセルトリ様類内膜癌の1例を経験したので報告する。症例は44歳、2妊2産の女性。子宮がん検診のため受診した前医で超音波検査を行ったところ子宮腔内に筋腫と思われる腫瘤が認められ、子宮鏡下にTCRで切除された。組織学的に類内膜癌と診断されたため、精査加療のため当院産婦人科に紹介となった。当院で術前に行った内膜生検では腫瘍は認められず、MRIでも子宮内腔にとどまるとの画像診断結果により、子宮全摘術、付属器摘除術、センチネルリンパ節生検を行った。子宮には、子宮内膜面に露出せずわずかに子宮内膜と連続し筋層1/2以下に浸潤する淡明な胞体を有する不規則な異型腺管を認めた。免疫染色では、CK(AE1/AE3)(+), Vimentin(+), PAX8(-), ER(+), PgR(+), p53(-), GATA3(-), Inhibin-α(+), Calretinin(+), CD56(+)であり、セルトリ様類内膜癌と診断された。病期は、pT1aN0, FIGO stage IAであった。術後2か月で再発兆候は認められない。まれな組織型を示す子宮内膜癌を経験したので報告する。