抄録
【症例】70歳代、男性【主訴】心窩部痛、黒色便【現病歴】1週間前から心窩部痛と黒色便が持続するため他医療機関の内科外来を受診した。血液検査ではHb5.5g/dL、MCV99.2fLと正球性貧血を認めた。腹部単純CT検査で胃角部後壁に直径40mm大の結節性病変を疑う所見を認めたため、精査加療目的に入院となった。【既往歴】高血圧症、高尿酸血症、慢性腎臓病、アルコール性肝障害【生活歴】飲酒:焼酎2合/日、喫煙:10本/日(20歳から入院時まで)、アレルギー:特記すべき事項なし【施行歴】柿や毛髪を含めた偏食歴はなし【入院時現症】頭部:眼瞼結膜蒼白あり。腹部:平坦で軟、心窩部に自発痛と圧痛あり。【入院後経過】入院同日の上部消化管内視鏡検査では胃角部小弯に露出血管を伴う潰瘍を認めたため、止血鉗子による焼灼凝固を行った。入院同日に濃厚赤血球液4単位を輸血し、絶食点滴、オメプラゾール40mg/日の静注を開始した。第5病日の血液検査ではHb7.1g/dLと貧血は改善傾向となった。同日の上部消化管内視鏡検査では胃潰瘍からの再出血はなく、胃体上部大弯に40mm大の黒色調の胃石を認めた。胃石の外殻は硬く鉗子では破砕不能だった。第6病日から食事を再開し、オメプラゾールの静注からボノプラザン20mg/日の内服に変更した。第11病日よりコーラ1,000ml/日の14日間の経口摂取を開始し、第25病日に胃石の治療目的に当院消化器科に転院した。第27病日の上部消化管内視鏡検査では胃石の外殻は軟化し、鉗子での破砕が可能となった。胃石を25mm径の内視鏡治療用スネアで胃石を破砕し、30mm径の回収ネットで破片を回収した。特記すべき合併症なく、第30病日に退院した。以後は外来通院とボノプラザン20mg/日の内服を継続している。【考察】胃石は高頻度で胃潰瘍や腸閉塞を合併するため、診断後は速やかに治療すべきとされる。今回、胃潰瘍を合併した胃石に対してコーラによる溶解療法と内視鏡的破石術を行った一例を経験したため、文献的考察を加えて報告する。