道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
基礎医学から臨床研究へ:心臓核医学多施設共同研究とEBM構築の40年のオートバイオグラフィ
中田 智明
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2025 年 8 巻 1 号 p. 1-21

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抄録

1980年代心臓病学基礎研究の大きな1つの流れは、冠循環生理学、虚血再灌流傷害そして、それに対する心筋保護・虚血耐性であった。この3つのテーマは互いに密接に連動しているが、私は幸いにもこの3大テーマを包括する基礎研究に進むことができた。特に心筋傷害の代表的病態として気絶心筋、冬眠心筋、再灌流不整脈reperfusion arrhythmiasが注目され、基礎医学や臨床医学の分野で研究が盛んになってきた時期であった。医師2年目大学院での研究テーマとして、冠循環生理・冠側副循環生理、心筋虚血・再灌流モデルで心筋代謝障害の解析を研究していた。この研究テーマがご縁で、ロンドン・聖トーマス病院レーン研究所のDJ. Hearse(世界初心筋保護液 St. Thomas Solutionの開発者)の研究室への留学に繋がった。医師1年目の後半、実は同時並行で、偶然が重なり心臓核医学の臨床と臨床的研究を始めていた。道内では数台目、大学病院では初のSPECT(Single-Photon Emission CT)装置とワークステーションが導入されたことが直接のきっかけであった。心電図同期RI左室造影法による左室収縮・拡張機能の定量的評価、心電図同期心プール法にSPECT+位相解析法応用による三次元的左室局所機能評価の研究を開始した。英国留学後は、新しくできた心臓臨床チームで、当時開始間もない待機的PCI後の冬眠心筋や急性心筋梗塞再灌流療法後の気絶心筋の核医学的評価、心電図同期法心筋SPECT法の解析ソフトウェア開発も行った。また、治験では、アデノシン負荷心筋血流イメージング、抗ミオシン抗体Fabイメージング、心筋123I-BMIPP心筋脂肪酸代謝イメージングの国内第III相多施設臨床試験に参加できた。その後多くの多施設共同研究に参加しまた企画することもできた。主なものは、札幌医科大学と関連3施設による123I-MIBGによる心不全予後予測の前向き研究、大阪国立循環器センター主導の123I-BMIPPを用いた肥大型心筋症予後解析研究、北海道心臓核医学研究会を母体とした123I-BMIPP心筋脂肪酸代謝イメージング用いた急性心筋梗塞治療後の前向き予後追跡調査研究、全国規模の研究では、旭川医科大学菊池健次郎先生主導の透析患者を対象にした123I-BMIPP心筋脂肪酸代謝イメージング用いたB-SAFE研究、京都府立医科大学西村恒彦先生主導の安定冠動疾患を対象にした予後評価のJ-ACCESS (Japanese Assessment of Cardiac Event and Survival Study by Quantitative Gated SPECT)研究である。さらに、小生主導で米欧の先生方と歩調を合わせ共同コンセプトで開始させていただいた国内6施設心不全123I-MIBG統合データベースによる予後リスク層別化のJ-META(Japanese MIBG multicEnter cohorT Analysis in Heart Failure)研究である。最後に、直近で企画した研究は2023年18F-FDG PETイメージングを用いた心サルコイドーシスの診断と予後に関するJ-CASP研究(全国13施設、連続231例)であった。こうした研究成果は論文化でき、ガイドラインに引用され、さらに123I-MIBGイメージング研究では、米国で初めての心不全イメージングとしてのFDA認可に貢献できた。このように、自身の基礎研究から知識のあった心機能、冠循環、心筋虚血、心筋代謝等の知識・経験が図らずも各種心臓核医学イメージングの臨床研究に役に立ち、多少のEBM・ガイドラインづくりに貢献できたことは幸いであった。この40年近く注力してきた心臓核医学の研究と臨床を振り返る機会を頂いた道南医学会関係者の方に深謝いたします。

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