2025 年 8 巻 1 号 p. 61-65
【背景・目的】現在も国内でがん化学療法によるB型肝炎ウイルス(以下HBV)再活性化症例が報告されている。HBV再活性化による肝炎はB型肝炎治療ガイドラインの遵守にて予防可能とされているが、医師の業務負担が大きいことが当院では課題だった。そこで医師のタスクシェアとガイドライン遵守率の向上を目指してプロトコールに基づいた薬剤師の検査オーダー代行(以下検査代行)を2022年10月より開始した。効果検証の為、開始後の検査実施率を調査したので報告する。【方法】2022年10月から2023年3月までの期間を調査した。薬剤師による検査代行は注射剤の抗がん剤投与患者を対象にした。投与前日にHBsAg、HBsAb、HBcAb、HBV-DNA検査を確認のうえ必要に応じオーダーし、HBV-DNAは3か月、他3項目は1年経過した場合も実施した。【結果】対象は742人で医師単独/医師+薬剤師介入による検査実施率はそれぞれHBsAgが75.3%/97.7%、HBsAbが69.7%/97.4%、HBcAbが70.2%/97.4%、HBV-DNAが60.2%/99.3%であった。検査代行により既往感染者3名にHBV-DNAの陽性転化を認め核酸アナログが開始された。【考察】検査代行により検査実施率は100%に近付いた。HBV再活性化が認められた3例については、検査代行によるHBV-DNA上昇の発見と早期対応にて肝炎の発症予防に貢献できたと考えられる。HBV再活性化による肝炎は重症化しやすく、特にde novo B型肝炎は死亡率が高いため適切な監視体制、早期対応にて発症させないことが必須と考える。今後は注射抗がん剤以外も対象とする必要があると考え検討中である。【結論】薬剤師による検査代行はHBV再活性化の早期発見ならびに早期治療に有用である。