抄録
アパタイトとチタン酸マグネシウムの2種の結晶が析出するキャスタプルガラスセラミックスの機械的性質に及ぼす結晶化(セラミング)の影響を検討するため,結晶化処理温度を変化させ,曲げ強さ,破壊靱性および硬さなどを調べた.その結果,結晶化処理したガラスセラミックスの曲げ強さは結晶相の増加につれて高くなることがわかった.ガラスセラミックス中に析出するチタン酸マグネシウムは同量のアパタイトの析出に比較し,強さに対して効果的であることが示唆された.破壊靱性はアパタイト結晶だけを析出させた試験片で,アズキャストの場合に比較して,2倍の値が得られた.このことは硬さの低いアパタイト粒子でもクラックのピン止め効果を持つものと考えられた.本材料は市販のボディー用陶材より高い機械的性質が得られたことから,審美補綴材料として使用できる可能性が示唆された.