抄録
三種のグラスアイオノマーセメントを選んで機械的性質を測定し,各セメントの特性を検討することにより,今後の材料開発の参考とした.三種のセメントのうち一種は,ガラス繊維を含有した自硬性の試作材料で,他の二種は市販の自硬性および光照射型セメントであった.バイアキシャルまたは通法の三点曲げ試験をおこない,後者からは弾性係数も求めた.37°C,相対湿度100%で24時間保存した試料を,室温で試験した.市販のセメントが典型的な脆性破壊挙動を示したのに比し,繊維を含有した試作材料では,破壊過程を著しく遅延する効果が認められ,これはワイブル係数が大きくなること,すなわちより安定した破壊挙動につながった.市販のセメントで得られた特性は,象牙質に近似した弾性率と歯科用複合レジンに匹敵する強度であった.